終身保険に入る時についつい悩んでしまうのが、保険金の受取人を誰にすべきかという点です。そこで今回はどこまで受取人として設定できるのか、受取人によって変わる税金の種別など、終身保険の受取人についてを徹底解説します。
終身保険の保険金は誰が受け取れる?
終身保険に入るにあたり、保険金は誰が受け取ってもいいのでしょうか?多くの方が両親や配偶者、自分の子供を選ぶと思いますが、それ他にはどんな人物を受取人として設定可能なのでしょうか?
配偶者や孫など二親等まで
終身保険の受取人として選べるのは、基本的には配偶者と二親等以内の血族に限られます。具体的には被保険者(保障の対象となる人)の配偶者・両親・子供・祖父母・兄弟姉妹・孫などです。
ただし二親等以内の血族が誰もいない場合には、叔父や叔母・甥・姪などの三親等内の血族や、内縁関係にある人物でも設定できるケースもあります。
商品によって受取人の適応範囲は変わってきますので、二親等以内の血族以外を受取人として選ぶことを検討しているときは、事前に確認しましょう。
一度決めた受取人は変更できるの?
例えば独身時代に入った終身保険の受取人を両親としていたとき、結婚を機にそれを配偶者へ変更可能なのでしょうか?
保険契約者(保険料を支払う人)と被保険者が同じなら問題なく変えられますが、異なる場合には双方の同意が必要です。いずれにしても、保険期間中であればいつでも自由に変更できますが、後々トラブルにならないように余裕をもって変更手続きを行いましょう。
なお、遺言書でも保険の受取人を変更できます。ただし遺言書の方式が法律上適切でないと認められないケースもあるので注意してください。また、遺言の有効性を確かめる手続きなども必要となるため、普通に変えるよりも時間がかかってしまうことが多いようです。
複数の人が受け取ることも可能
終身保険の受取人は1名だけでなく、一度に2名以上の人を選んでもOKです。この場合は、それぞれが受け取る保険金の割合を保険加入時の書類に記入する必要があります。
例えば妻に5割、子供たちに2.5割ずつ受け取らせたいなら、『妻50%、息子(次男)25%、娘(長女)25%』といった具合に記載するといいでしょう。
年末調整で受取人を記入する必要がある
会社勤めされている方は、年末調整の際に終身保険の受取人を記入する必要があります。
年末が近づくと生命保険会社から『生命保険料控除証明書』が自宅に郵送されてくるので、そこに記載された情報をもとに『給与所得者の保険料控除申告書』に必要事項を記入しましょう。
生命保険料控除欄に氏名と続柄を書く
保険料控除申告書の『生命保険料控除欄』には、生命保険料控除証明書に記載されている以下の情報を転記します。
- 契約の基本情報
- 新制度・旧制度の区分
- 保険料などの金額
契約の基本情報には『契約者の氏名』の他に、『受取人の氏名と契約者との続柄』なども記入するようにしましょう。
なお、新制度か旧制度かで生命保険料控除の適用限度額が変わってきます。
新制度が適用されるのは契約日が平成24年1月1日以降のもの、それ以前に契約したものは旧制度です。新制度なら控除の適用限度額が4万円、旧制度なら5万円となります。
受取人が複数人いる場合は代表者を記入
保険に加入するときの書類には複数の受取人を書けますが、保険料控除申告書の『保険金等の受取人』の項目は1名分のみしか用意されていません。受取人の中から代表として1人選んで名前を記入しましょう。
子供や孫が受け取る場合は税金がかかるの?
保険金を受け取る際、どうしても気になるのが税金の問題です。特に相続税と贈与税とでは税率が大きく変わってくるので、子供や孫を受取人にしてる場合には注意が必要になります。
解約返戻金を受け取る場合
解約返戻金にかかる税金の種類は、下の表のように契約者と受取人を誰に設定していたかによって異なります。
契約者(保険料を支払う人) | 夫 | 夫 |
受取人(保険金を受け取る人) | 妻(子供) | 夫 |
税金の種類 | 贈与税 | 所得税 |
まず、『契約者と受取人が異なる場合』に課せられるのが贈与税です。贈与税には110万円の基礎控除がありますから、実際の課税対象額は『解約返戻金-基礎控除(110万円)』となります。
そして、『契約者と受取人が同一の場合』には所得税の課税対象です。気になる課税対象額ですが、『解約返戻金-払込保険料総額-特別控除50万円)×1/2』となります。
死亡保険金を受け取る場合
死亡保険金の場合は、契約者と受取人に加えて、被保険者を誰にしているかによって変わります。
契約者(保険料を支払う人) | 夫 | 夫 | 夫 |
被保険者(保障の対象になる人) | 夫 | 妻(子供) | 妻(子供) |
受取人(保険金を受け取る人) | 妻(子供) | 子供(妻) | 夫 |
税金の種類 | 相続税 | 贈与税 | 所得税 |
死亡保険金にかかる税金の種類ごとの課税対象額は以下のようになります。贈与税と所得税については、解約返戻金と同様の考え方です。
- 相続税の課税対象額=死亡保険金-基礎控除額(3,000万円+[600万円×法定相続人の数])
- 贈与税の課税対象額=死亡保険金-基礎控除(110万円)
- 所得税の課税対象額=(死亡保険金-払込保険料総額-50万円)×1/2
死亡保険金にかかる相続税については、残された家族の生活を考慮し、上記に加えて『500万円×法定相続人の数』で計算される非課税枠が設けられています。
更に、相続人が配偶者の場合には『最低でも1億6,000万円までが非課税』となる軽減措置もあるので、よほどの大金でない限りは相続税は発生しません。
年金として受給する場合
解約返戻金や死亡保険金を年金形式で受け取った場合、契約者と受取人が同じなら、雑所得として所得税の課税対象です。原則として源泉徴収されます。
受取人を契約者以外の方に設定した場合には、所得税とは別に『年金受取開始時に贈与税が発生』するのでご注意ください。
雑所得は『その年に受け取った年金の額-その金額に対応する払込保険料の額』から算出しましょう。実際の所得税額は『雑所得を含む課税所得金額に応じた所得税率と控除額』により決定します。
まとめ
終身保険は自分の老後や大切な方の人生に大きな影響を与えるものです。なるべく多くの保険金を残したいところですが、受取人を誰に設定するかで保険金にかかる税金の種別も変わり、実際に受け取れる保険金の額が上下してしまいます。
この記事を参考にして、終身保険に入る際は、ぜひ受取人を十分考慮して選ぶようにしましょう。