納棺の基礎知識。映画で話題の納棺をとり行う納棺師もご紹介

葬儀の基本

映画『おくりびと』で注目を浴びた納棺師という仕事ですが、実際は納棺師はどんなことをしているのでしょうか。納棺についての基本知識や納棺師の仕事や納棺師になるための方法などから、納棺師の仕事について考えていきましょう。

納棺とはどういうもの?

納棺の意味

『納棺』とはその名の通り、遺体を棺に納めることを指します。しかし、ただ入れるのではなく、遺族が故人としっかりとお別れできるようにするための大切な儀式のひとつです。

身近な人の死にしっかりと向き合い、故人のことを思うことが、供養の第一歩になります。そのために、納棺は大切な役割を果たしています。

納棺の儀の流れ

納棺は基本的に、通夜の前に行われます。まずは遺体を清め、死化粧をして綺麗に整えたあと、主に遺族の手で故人に死装束を着せます。

全ての用意が整ったら、遺族や親族の手で、故人を棺に納めることとなります。これが、いわゆる『納棺の儀』です。

場合によっては、遺体の口元を水で潤す『末期の水』という儀式をすることもあります。これは、故人があの世で渇きによって苦しまずに済むように、という意味が込められています。

また、生前の汚れや煩悩を洗い落とすという意味で、故人を洗う『湯灌(ゆかん)』という儀式を行うこともあります。

納棺の儀については、地域や宗派、それぞれの遺族の意向によって異なります。希望がある場合、事前に葬儀社に伝えておくとスムーズです。

副葬品を納める際の注意点

故人とともに埋葬するものを、『副葬品』といいます。副葬品は主に、杖やわらじといったあの世への旅支度に必要なもの、また、故人が愛用していた物、例えば趣味の道具やタバコなどを入れます。

処分するのは忍びないが見ているのもつらい、という品を入れることも可能です。故人との思い出を心の中で整理するために、副葬品は丁寧に選びましょう。

しかし、入れてはいけない副装品もあるので注意してください。

お骨の損傷に繋がるようなものは不可

副葬品は、基本的にその後の火葬でトラブルを起こしかねないものは入れてはいけません。

スプレー缶やライターは、破裂や爆発の可能性があるので禁止されています。ほかにも、プラスチック製のメガネは有毒ガスを発生する可能性があったり、ビンやガラスは遺体を傷つけたりすることがあります。

大量の本や衣類は可燃物ではありますが、多くの灰を出すので、入れないようにしましょう。自分で判断できなければ、葬儀社に相談するのが無難です。

孫など存命の方の写真は避ける

また、存命中の人が写っている写真は棺に入れないようにしましょう。

副葬品とは、故人があの世に持っていく持ち物のようなものです。そのため、生きている人が写っている写真が入っていると、「その人もあちらの世界へ連れて行かれてしまう」と考える人がいます。

故人が寂しい思いをしないように、という気持ちも大切ですが、写真を入れる場合は、故人ひとりだけが写っているもの、もしくは許可を得たうえで家族だけが映っているものだけを入れましょう。

親族や友人などが写っている写真はトラブルのもとなので避けてください。

納棺の服装

納棺の際に故人に着せる服装といえば、『死装束』ですね。ですが、死に装束がどんなものかきちんと知っている人は案外少ないかもしれません。

また、自分が納棺の儀に立ち会うときに、どんな服装にすればいいのか悩むこともあるでしょう。納棺に関する服装について紹介します。

故人に着せる死装束はどんなもの?

故人に着せる『死装束』というのは、全身が白一色の和服が一般的です。多くの場合、縫い目の糸を玉留めせず、返し縫をしない縫い方で作られた経帷子という和服を、普段の合わせとは逆の左前で着せます。これは、生者と区別するためです。

そして、手足を守る手甲と脚絆を身につけ、三途の川を渡る運賃である6文銭を入れた鞄、いわゆる頭陀袋を入れます。

ほかにも、あちらの世界への旅立ちに必要な旅やわらじ、杖といったものを、死装束の一部として身に着けさせることもあります。また、最近では、故人が愛用していた服を着せることもあるようです。

納棺の儀に立ち会う際の服装は?

では、納棺の際に立ち会う遺族は、どのような服装で臨むべきなのでしょうか。

基本的には、その後お通夜という流れなので、喪服で行くことが多くなっています。しかし、地域によっては、納棺の儀は『私服』というところもあるようです。

しきたりが分からなければ、 葬儀をする地元に住んでいる人や、葬儀社の人に相談しましょう。もし『平服』と言われたら、黒や無地を基調にした、カジュアルすぎない私服を着ていきましょう。

納棺師には資格はいるの?

遺体を扱う仕事である『納棺師』にはなるためには、どういう資格が必要で、どういう手段があるのでしょうか。

特別な資格は必要ない

実は、納棺師になるために、学歴や特別な資格は必要ありません。

しかし、遺体に触れる仕事であり、悲しみにくれる遺族と直接顔を合わせるということから、納棺師になった後に、様々な研修をクリアしなくてはいけないのが一般的です。

葬儀会社に就職してから納棺師になることが多いのですが、その場合は必ず納棺師になれる確証はありません。

どうしても納棺師になりたい、という希望がある人は、納棺の専門業者に就職することもひとつの手段です。

基礎を学べる専門学校がある

ホテルやブライダル関係の専門学校のなかには、葬儀に関するコースを開講しているところもあります。

そういった専門学校では、納棺師になるために必要な知識はもちろん、法律や宗教、遺族のサポートなど葬儀に関する幅広い知識を身に着けることができます。

ですから、納棺師を目指す人や葬儀関連の仕事に就きたいのなら、時間やお金は余分にかかりますが、そうした専門学校へ行くのはひとつの手段です。

納棺師が題材の映画

海外で高く評価され、日本でもヒットした映画『おくりびと』によって、『納棺師』という仕事はいちやく注目を集めるようになりました。

『おくりびと』や、『おくりびと』の原案になった『納棺夫日記』という小説、そして隠れた名作映画である『おみおくり』という作品からは、納棺師という仕事をもっと詳しく知ることができます。

海外でも高い評価を受けた おくりびと

2008年に公開された映画『おくりびと』は、第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、国内外を問わず大きな反響があった映画です。

主演は本木雅弘、妻役を広末涼子が演じ、豪華なキャスティングでも話題になりました。

この作品の主人公は、プロのチェロ奏者という道をあきらめ、納棺師として働き始めます。

腐乱した遺体を納棺したり、恋人に「汚らわしい仕事」と言われながらも、主人公が自分の仕事に誇りを持ち、成長していく姿を描いたヒューマンドラマです。

映画の原点となった小説 納棺夫日記

この『おくりびと』の原案となったのは、納棺師の現場と死生観がつづられた、『納棺夫日記(著:青木 新門)』という本です。

この本は1993年に著者の地元である富山の小さな出版社から出版され、その後ベストセラーとなりました。

1996年、本木雅弘が著者を訪ね、著者は映画化を一度許可しましたが、見せられた脚本が『納棺夫日記』とは違う部分が多く、後日映画化を拒否します。

その後、「全く別の作品としてなら」という著者の意向を受け、『納棺夫日記』とはまったく違う話として映画『おくりびと』が作られたのです。

女性の納棺師を主人公にした おみおくり

納棺師に関する映画というと真っ先に『おくりびと』が挙げられますが、2018年3月に公開された『おみおくり』という映画も、隠れた名作として評価されています。

この映画の主人公は女性の納棺師です。7つのエピソードを通して『納棺師』という仕事が描かれており、大切な人の死を受け入れるうえでの『納棺師』の果たす役割が理解できます。

原案は『今日のご遺体 女納棺師という仕事(著:永井結子)』というエッセイです。『おくりびと』と合わせて見てみると、『納棺師』という仕事の大切さを、より知ることができます。

まとめ

遺族が故人を見送るための『納棺』はとても大切な儀式ですし、『納棺師』は日本人の死生観を体現している存在だと言えるでしょう。

しかし実際には、そうした仕事について普段あまり考えることはありません。

近しい人とのお別れをきちんと行うために、『納棺』や『納棺師』が果たす役割を忘れないようにしましょう。

タイトルとURLをコピーしました