養老保険には2種類の受取人があることをご存知ですか?1つは『死亡保険金受取人』で、もう1つは『満期保険金受取人』です。本記事では、養老保険の受取人についての知識や税制面の違い、法人契約で注意すべき点など、加入前に知っておくべきことを紹介します。
養老保険とは
『養老保険』とは、貯蓄型の生命保険の一種で、満期に被保険者が生存している場合、『満期保険金受取人』が満期保険金を受け取り、保険期間中に被保険者に万一のことがあった場合、『死亡保険金受取人』が死亡保険金を受け取ることができます。
満期保険金と死亡保険金は同額で、万一の保障と貯蓄の両方の目的を満たすため、教育資金や老後の資金として利用されるケースが多い保険です。
生死混合保険
生死混合保険とは、死亡保険と生存保険が組み合わさった保険のことを言います。
『養老保険』は保険期間中に、被保険者が死亡した場合は死亡保険金が、満期まで生存していた場合は満期保険金が、どちらも同額で支払われるもので、死亡保険と生存保険の割合を1:1とした生死混合保険と言えます。
支払者が自分で受取人を指定できる
『養老保険』は契約をする支払者が、契約時に受取人の指定をします。保障と貯蓄の二面性から『死亡保険金受取人』と『満期保険金受取人』それぞれ別の人を選ぶことが可能です。
受取人は、被保険者の『配偶者および二親等以内の血族(※)』を選ぶケースが多くなっています。保険会社によっては内縁関係やほかの血族も認める場合もあります。
(※二親等以内の血族は子ども・両親・祖父母・兄弟姉妹・孫)
受取人によって税金が変わる
『養老保険』は死亡保険金・満期保険金ともに、支払者である契約者と受取人の関係によって、所得税の課税対象となるのか、相続税や贈与税の課税対象となるのかが決まります。
保険料支払者と受取人が同一の場合
保険料の支払者(契約者)と受取人が同じ場合は、死亡保険金・満期保険金どちらも一時所得としてみなされます。一時所得は50万円の特別控除を受けることが可能です。
一時所得=(保険金額-払込保険料の総額-50万円)×1/2
例えば、満期保険金が600万円で払い込み保険料の総額が570万円の場合、
(600万円-570万円-50万円)×1/2=-10万円
となり、一時所得は0円で非課税となります。
保険料支払者と受取人が異なる場合
保険料の支払者(契約者)と受取人が異なる場合は、『満期保険金』と『死亡保険金』とで、かかる税金が変わってきます。
『満期保険金』の場合は、支払者(契約者)が受取人に贈与したと考えます。したがって満期保険金は贈与税の課税対象となります。
一方、『死亡保険金』の場合は、保険料の支払者(契約者)と被保険者および『死亡保険金受取人』との関係によって異なります。
支払者(契約者)と被保険者が同じで、受取人が妻や子どもなど相続人の場合、死亡保険金には相続税がかかります。一方、支払者(契約者)と被保険者が異なり、受取人が契約者以外の場合は贈与税の課税対象です。
例えば、契約者が夫で被保険者が妻、受取人が子どもというケースでは死亡保険金には贈与税がかかります。少し複雑ですので、事前によく確認しておくとよいでしょう。
受取人に関してのよくある疑問
『養老保険』の申込書の受取人欄についての疑問や、受取人を変更する場合の注意点、保険料控除などよくある質問にお答えします。
被保険者本人を書いたり空欄でもいいの?
受取人を決める際は、『満期保険金受取人』の場合、被保険者本人にしても特に問題ありません。
しかし『死亡保険金受取人』の場合、保険金の受取時、受取人が死亡していることになり、現実にはあり得ない組み合わせとなります。基本的な受取人の範囲は『配偶者および被保険者の二親等以内の血族』ですので、被保険者本人の指定は認められないと考えられるでしょう。
受取人欄を空欄にした際の取り扱いは、保険会社の規定によります。具体的な受取人の指定を求められることもありますが、例えば『かんぽ生命』では、空欄の場合、満期保険金は被保険者、死亡保険金は被保険者の法定相続人が受取人とする規定です。
受取人については、保険金事件などの影響で以前より基準が厳しくなっています。保険会社で取り扱いが違うこともありますので、詳しくは保険会社のコールセンターなどで確認しましょう。
変更したいときや死亡してしまったときは?
受取人の変更は被保険者の『同意』の上、契約者から保険会社に通知して手続きします。受取人は1人でも複数人でも問題ないですが、基本的には『配偶者および被保険者の二親等以内の血族』を指定します。
また、平成22年4月の保険法制定以降、遺言に死亡保険金受取人を指定しての変更もできるようになりました。
一般的な手続きの流れは、保険会社から送られてくる書類を返送して完了となります。必要書類は、保険証券、運転免許証や健康保険証など契約者の本人確認できる書類のコピー、名義変更請求書などです。詳しくは保険会社にお問い合わせください。
受取人が死亡した場合も上記と同じく変更手続きが可能です。もし手続きする前に被保険者が死亡した場合は、『受取人の法定相続人』が受取人になります。
年末調整時の控除はうけられるの?
『養老保険』は年末調整時に『一般生命保険料控除』をうけることが可能です。
控除額は1年間に支払った保険料で変わり、最高控除額は4万円となります。(平成24年1月1日以降加入の場合)
給与所得者の場合、年末調整の際に『給与所得者の保険料控除申告書(※)』で申告できます。申告書には毎年10月頃、加入の保険会社から送付される『生命保険料控除証明書』の添付が必要です。
(※平成30年分より上記申告書を使用、平成29年分までは『給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書』を使用)
また確定申告で申告することも可能です。必要書類は『確定申告書』、『生命保険料控除証明書』です。サラリーマンの場合はほかに『源泉徴収票』が必要となります。
法人で契約するときのポイント
会社が契約者となり、従業員や役員を被保険者とする法人の契約で、法人がメリットをうけるには、保険金受取人を誰にするかがポイントです。
活用次第で大きなメリット
『養老保険』を法人で契約する場合、下記のように受取人を指定して、退職金を支給する福利厚生制度として活用することで、大きなメリットを得られます。
- 死亡保険金の受取人を従業員の遺族とする。
- 満期保険金の受取人を法人とする。
会社のメリットとしては次のようなものがあります。
- 払い込み保険料の1/2を『損金』に算入し税負担軽減。
- 退職金支給時の『損金』計上による赤字リスクを、満期保険金の『益金』でカバー。
- 『解約返戻金(※)』や『契約者貸付(※)』で急な出費や事業資金不足分を補うことができる。
(※解約返戻金とは保険を解約したとき戻ってくるお金)
(※契約者貸付とは解約返戻金の90%までの金額を、保険を解約しないで借り入れできる制度)
まとめ
『養老保険』は万一の保障と、将来の貯蓄が同時にできる生死混合保険です。『満期保険金受取人』と『死亡保険金受取人』の2種類の受取人を指定することができ、途中で受取人の変更も可能です。
支払者と受取人の関係によって一時所得や相続税など税金が変わるので慎重な検討が必要です。法人では受取人を上手に指定することで、損金算入などの節税メリットもあります。
養老保険をうまく活用して、万一の保障を得ながら教育資金や老後資金などのための貯蓄をしてみませんか。