これから年金の受給が始まる人や、年金受給が近づいている人は、確定申告はどのようにしたらよいのか、よく分からないという人もいるでしょう。そこで今回は、状況別に、年金受給者のための確定申告について解説します。
公的年金と確定申告の基礎知識
ではまず、公的年金を受け取ると税金はかかるのか、確定申告はどのような場合に必要なのかについて、基本的なことを解説します。
公的年金にも税金がかかる?
公的年金は、課税対象というものになります。ですが、年金すべてにかかるわけではなく、一部が課税対象となるのです。
年金は雑所得
年金は、「雑所得」にあたり、雑所得は課税対象とされています。雑所得はほかに、不動産所得や利子所得、配当所得と言ったものが当てはまります。この雑所得に該当するものが課税対象となりますが、公的年金もこの雑所得の区分に当たるのです。
所得を確定させて納税するのが確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの一年の間に得た所得と所得税やどの金額を計算して申告書を提出、源泉徴収された税金、納税などの過不足を調整する手続きとなっています。上述の通り、公的年金は課税対象となっています。
そのため、一定の金額以上を得るときは、源泉徴収が行われるため、税金の過不足を精算しなくてはいけません。
年金には年末調整がないので確認が必要
年金は課税対象の雑所得と上述しておりますが、雑所得の区分は年末調整の対象外の項目となっています。年末調整自体は、徴収された税金などを比較して、過不足がないかを確認して精算できますが、年金を受給している場合は、年末調整がないため、自分で確認する必要があるのです。
また、年金を受給しながら働いている場合も、同様で会社で年末調整を行ってくれますが、それ以外に所得を得ているため、自身で確定申告を行う必要があります。
年金受給者は確定申告が必要か
年金受給者でも確定申告が必要な場合と不要な場合があります。これまでの説明にあるように、一定額以下の所得であれば、不要になるケースもあるのです。
確定申告不要制度が適応される場合は不要
確定申告を行うのはなかなか手間もかかるので、行わなくても済むのであれば回避したいと考えている方も多いのではないでしょうか。もちろん、全員が行わなくてよいというわけにはいきませんが、多くの方は行わなくてもよくなる可能性があります。
これが、公的年金などの収入額の合計が400万以下で、これらのすべてが源泉徴収対象となっている場合です。公的年金には、老齢基礎年金や厚生年金、企業年金と恩給が該当します。また、公的年金以外の所得の合計が20万以下である場合です。
この二つの条件をどちらも満たすのであれば、確定申告不要制度が適応されます。そのため、自身がこの条件を満たすかどうかを確認して、該当するのであれば、申告は不要となります。この制度は、年金受給者への手間や負担を減らすための制度となっているので、確認してみてください。
源泉徴収票で確定申告が必要か判断できる
確定申告不要制度が適応されるかどうかを判断するには、源泉徴収票を見れば確認できます。
確定申告向けの書類が年初めから2月にかけて届けられますが、公的年金等の源泉徴収票の中に支払い金額欄という欄があり、その額が400万円以下であれば、確定申告が不要となっています。
公的年金以外にも受給している年金がある場合は、その支払い金額も合計して400万円以下であれば条件をクリアしていることになるわけです。
また、もうひとつの条件である、公的年金以外の所得合計についても、源泉徴収票や明細などを確認して、合計金額を計算しましょう。公的年金以外の所得の合計額が20万円以下であれば、2つめの条件もクリアしています。
住民税の申告が必要になるケースとは
確定申告書の提出が不要だとしても、住民税の申告が必要になるケースも存在します。それは、公的年金などの雑所得があり、公的年金などの源泉徴収票に記載されている控除外のそのほかの控除を受ける場合、公的年金などに係る雑所得以外の所得があるときが該当します。そのため、当てはまる人は住民税の申告を行わなくてはなりません。
控除の申告をすれば税金が戻ってくる場合も
確定申告で控除申請を行えば還付される場合もあります。そのため、自身がそれらの条件を満たしているかどうか判断し、控除申告を忘れないようにしてください。
病院に多くかかった場合は医療費控除を
1月1日から12月31日までの一年の間で医療機関に多くかかり、年間の自己負担額の合計が10万以上になった場合は、医療費控除を受けられます。また、所得金額が少ない場合は、負担額が10万以下でも受けることが可能になっているので、申告するようにしましょう。
これは確定申告をしないと受けることができないので、条件的に確定申告が必要ない場合でも、医療費控除を受けるのであれば、確定申告をして控除を受けましょう。
申告の際には、明細書などが必要になるので、日頃から明細書を保管しておくように心がけると、確定申告を行うときに困りません。
年金受給者は生命保険料控除も忘れずに
生命保険料控除などの控除も、確定申告を行なって還付してもらう必要があります。会社で働いていたときは、年末調整でできていたものになりますが、年金受給者はそうもいきません。そのため、自分で確定申告から申請して控除をしてもらえるようにするのです。こちらの手続きも忘れずに行なってください。
条件を満たしていれば住宅ローン控除も
住宅ローンをしている場合、条件さえ満たしていれば、住宅ローンの控除を受けられます。住宅借入金等特別控除という名称となります。これも、毎年確定申告を行うことで控除が受けられるので、押さえておきたいところです。
また、バリアフリーや省エネなどの特定のリフォームを行うために住宅ローンを借りたときは、特定増改築等住宅借入金等特別控除という名称となります。
確定申告をするためのポイント
予備知識なしで確定申告を行おうとしても、なかなかうまくいかなかったり、見落としや記載漏れがあったりします。前もって、どのような時期にどういった書類が必要になるかを知っておくと、申告の際に困らずにすみます。
ここでは、確定申告を行う時期や具体的な方法について解説します。
確定申告を行う時期
確定申告の時期は、毎年2月16日から3月15日までになります。ただし、開始時期と終了時期が土日になる場合は前後する可能性があります。
これらの期間内に、前の年の1月1日から12月31 日までの税金などを計算し、その過不足があれば支払ったり払い戻されたりします。
必要書類
確定申告書があり、この申告書に記載して提出します。申告書のほかに必要とされる書類は、年金の源泉徴収票が必要です。源泉徴収票はだいたい1月半ばあたりから順次発送されるので、2月前には手元に届くとされています。
もし、なくしてしまった場合などは再交付もできるので、すぐに再交付してもらえるように手続きをとっておくとよいでしょう。保険料などの控除証明書も忘れてはいけません。もともと、勤務先へ年末調整の際に提出していた保険料の控除証明書が必要と覚えておくと忘れないでしょう。
また、年間の医療費が多くかかった方は、それら受診の控えと明細書が必要となるので、明細書などはしっかりと保管しておいてください。住宅ローン控除も該当する場合は、住宅借入金等特別控除額の計算明細書や、住民票の写し、住宅ローンの残高証明書などが必要になります。
これらは初年度に必要となり、以降は残高証明書と年末調整のための住宅借入金等控除証明書で手続きができます。住宅ローン控除を始めて受ける際には、書類が多く必要になりますので、事前にそれらの書類を取り揃えておくと安心です。
年金受給者が使う確定申告書
確定申告を行う際には、様式がありますが、この様式のAが勤め人や年金受給者が提出する確定申告書となります。このA様式と呼ばれるものは、給与所得、公的年金などの雑所得や一時所得、配当所得の身の場合に使用する様式となっています。
また、B様式と呼ばれるものは、誰でも使用できる申告書となっており、個人事業主や不動産で収入を得ている場合はこの様式での提出が必要です。そのため、公的年金だけを受給している方は前者のA様式を用いて申請することになります。
これらの必要書類の提出方法は主に3種類あり、管轄の税務署へ直接持っていく方法です。
基本的には、必要事項を家で記載して提出しますが、不安な人は税務署で記載もできますが、混雑する場合もあるので時間に余裕を持って行くのがよいでしょう。もうひとつの方法は、郵送となります。
この場合は、消印有効となっているので、期日内に送れば問題ありませんが、万が一のことを考えて前もって郵送を済ませておくのが一番です。
最後の方法としては、e-Taxというインターネット上で行える電子申請となっています。この方法をとるには事前申し込みが必要となっています。
まとめ
年金受給者のための確定申告についてご紹介して来ましたが、所得が年金のみの方は基本的に確定申告を行う必要がありません。しかし、医療費やそのほか、保険料など控除の申告を行うことにより、税金が返ってくるケースもありますので、確認してみてはいかがでしょうか?