『社葬』は、一つの時代が終わり、新たな時代が始まる節目の大切な儀式です。故人を哀悼する意味だけではないため、参列者はそれに相応しいマナーや態度で臨む必要があります。恥をかかないよう、香典や服装など、参列についての基本を解説します。
社葬の基礎知識
社葬の『社』は会社や企業のことで、会社を挙げて行う葬儀のことを指しています。では、具体的には、誰が、誰の為に行う葬儀のことなのでしょうか。個人を弔う一般葬との違いについて解説します。
社葬と一般葬との違い
『社葬』は、主に企業の代表者やその企業に功労のあった故人のために、会社・企業が主体となって執り行う葬儀のことです。当然、葬儀費用は企業側の負担となります。
一般葬は、故人の身内が『喪主』になりますが、社葬は企業が『施主』(※)となり、遺族ではなく会社の代表者などが『葬儀委員長』を務めます。
また、社葬と一般葬では『葬儀の目的』が大きく異なるといえるでしょう。
- 生前の業績や徳を称える
- 送る者や後継者が故人の意思を理解し継承することを示す
- 今後のより一層の結束を確認する
故人を偲ぶ、哀悼するという意味合いが強い一般葬に対し、社葬には社内外に『故人の意思と事業の継承をアピールする意味』が込められているのです。
参列者の数は、社員や取引先などを含めると、数百人から数万人といわれ、一般葬とは規模が大きく違います。
(※施主とは、葬儀費用を支払う責任者のこと)
これだけは押さえたい、社葬マナー
社葬は企業側が主体となって行う大規模な葬儀です。身内や親しい人だけが集まる一般葬とは違い、企業のトップや重役、取引先など、さまざまな人々が参列するでしょう。
功労のあった故人を称えるという意味も込められているため、くれぐれも礼を失することは避けなければいけません。基本的なマナーを説明していきます。
参列時の服装と持ち物
葬儀委員長や副委員長はモーニングコートとよばれる『正礼装』が一般的ですが、参列者は通常の喪服にあたる『略式服』で参列するのが基本です。
略式服は黒やダークグレーのフォーマルスーツやワンピースのことで、派手な模様や素材のものは避ける必要があります。
案内状に『平服でお越しください』と記載されていた場合は喪服を着用する必要はありませんが、カジュアルな服装は避け、ダークグレーのスーツや清楚なワンピ―スなどを着用するのが好ましいでしょう。
会社代表として社葬に参列する際は、名刺を忘れないようにしましょう。自分が代理人の場合は、自分の名刺と参列できない人の名刺を受付で渡します。
社内でも社外でも、恥をかかないふるまい方
社葬は、会社の内外から多くの人が訪れます。会社の代表として葬儀に参加する人もいれば、故人のいた会社の社員として参列する人もいるでしょう。つまり、社葬はその企業の質が問われる場所なのです。
企業を取り巻くすべての関係者が一堂に会するため、身だしなみはもちろん、言葉遣いや立ち振る舞いなどにも気を配るようにしましょう。『ルール違反』や『マナー違反』とならないように、事前に故人や相手の会社について下調べをしておくことも必要です。
神式?仏式?宗教別の弔問方法
初めて葬儀に参列する際に気になるのが宗教別のマナーです。相手がどの宗教に属するのかは前もって調べておくと慌てませんが、分からない場合は以下の3つのパターンを覚えておくと便利です。
- 仏式作法(焼香)
- 神式作法(玉串奉奠)
- キリスト教の作法
仏式は一般的な焼香ですが、神式の場合は、仏式の焼香にあたる玉串奉奠(たまぐしほうてん)が行われます。玉串は根元を右手、枝先を左手で受取ります。右に回し根元を祭壇に向けて置いた後、音を立てない『しのび手』で二礼二拍手一礼をします。
キリスト教式は献花が一般的です。牧師・神父・ご遺族に一礼し、花の根元を左手、花を右手で受け取ります。手前向きに献花台の上に置き、手を合わせ、頭を下げて黙礼しましょう。
葬儀中にしてはいけないこと
葬儀には、さまざまな企業の代表者や顧客、取引先などが参列しています。葬儀の合間に商談や打ち合わせ、名刺交換などを行うのはルール違反です。
社葬であっても、故人を追悼するという意味合いは変わりません。仕事の延長で葬儀に参列することは避けましょう。
社葬に参列できない時はどうすればいい?
社葬に参列できない場合、まずは自分の代わりとなる代理人を立てます。参列者は会社の代表である社長や会長、または故人と同等以上の立場の人物が参列するのが一般的です。そのため、代理人も自分の代わりになる相応しい人を選出する必要があります。
相応しい代理人が選出できず、社葬に誰も参列できない場合は、『弔電』という形で心から哀悼の意を示します。
弔電を送る
『弔電』は訃報を聞いたら、故人の自宅または葬儀場に送るのが一般的です。通夜に届くのが理想的ですが、間に合わない場合は告別式や葬儀の前までに届くように手配しましょう。
自宅以外の場所に送る際は、配送が早すぎると、葬儀会場で受け取って貰えないことも考えられます。弔電の受付に関して、主催者側から指定場所の記載がありますので、しっかりと確認しておきましょう。
宛先の書き方
一般葬の弔電は、喪主宛てに送りますが、社葬の場合、葬儀責任者または主催者(企業)宛てにします。弔電の文末の差出人は、会社名だけでなく、個人名もフルネームで入れるようにして下さい。
香典の金額と参列費用のやりくりの方法
案内状に『香典辞退』と記載されている場合以外は、社葬でも香典は必要となります。一般的な葬儀と金額が大きく違うのは明らかですが、一体どれほどの金額が必要になるのでしょうか。
会社の経費で落とせるのかどうか、などの疑問についても解説します。
一般社員の香典の相場
香典は故人とのお付き合いの深さによって金額が変わります。では、自社の社葬に一般社員として参列する際は、どのくらいの香典が妥当なのでしょうか?
基本的には、1万円~3万円が相場といわれています。大きな会社であれば、社内規定などで決められているケースもあるようです。
取引先が会社代表として葬儀に参列する場合や、会社・社長名義で香典を出す場合は、3万円~10万円ほどとなっています。
参列費用はどこまで経費で落とせる?
香典などの参列費用は、事業上の経費として落とせるのでしょうか?どのような立場で参列するかによって、経費に計上できるかどうかが決まってきます。
香典を経費で落とせる場合
まずは、参列者が事業主であるケースを説明しましょう。
故人が得意先・仕入先など自分の事業に関わりがある場合は、『接待交際費』として計上することができます。香典以外に、会場に向かう交通費なども経費に計上することができるので、しっかりと記録を残しておきましょう。
香典には領収書がありません。そのため、日時などが記載された案内は手元に残しておき、包んだ金額などもしっかりと記録しておいて下さい。
特定支出を上手く使おう
次に、一般のサラリーマンが社葬に参列したケースです。実は、サラリーマンであっても経費が控除される、『特定支出控除』という制度があるのをご存じでしょうか?
『業務にかかる支払いが多い場合』に利用できる制度で、通勤や転勤の際の引っ越し、研修にかかる費用、資格取得のための費用などに適応されます。
『業務に関する交際費用』という項目があり、会社の得意先、仕入れ先、職務上関係のある人への接待費用なども含まれます。
あくまでも業務に関わることが前提なので、対象外になるケースもありますが、上手く利用して自己負担を減らすことも大切です。
まとめ
社葬はそう頻繁に行われるものではありませんが、基本的なマナーや香典の相場などは把握しておきたいものです。取引先や故人と関わりの合った人々が一堂に会する場なので、企業の顔として恥ずかしくない振る舞いを心がけましょう。