終活をするにあたり、気になるのが相続税のことです。できるだけ残された家族に負担をかけたくないと考える人が多く、対策としてよく行われているのが『お墓の購入』です。生前にお墓を準備しておくことには、さまざまなメリットがあります。
相続税の基本知識を知っておこう
相続税とは、亡くなった人の財産を相続人がもらうときに、支払わなければならない税金のことです。遺言状などによって相続人でない人が財産をもらう場合も、相続税の対象になります。そんな相続税についてわかりやすく解説します。
相続税はいくらからかかる?
相続税は、遺産の総額が基準となり、その総額に税率をかけて計算されます。遺産の総額には、土地や建物、預金、現金、株式、投資信託、債券、過去3年以内に相続人に贈与した財産などが対象です。
土地・建物の不動産に関しては、購入時の価格ではなく、『路線価』などを参考に算出された時価・評価額で計算されます。現金が少なくても、土地や建物を1つでも持っている人は注意しましょう。
遺産の総額と人数でかわる
遺産の総額が多いほど、相続税が高くなりますが、相続人が多いほど相続税は安くなります。相続人が多いほど、税金のかからない範囲、つまり『基礎控除額』が大きくなるからです。
基礎控除額は『3,000万円+600万円×法定相続人の数』で計算されます。この金額分は、遺産の総額から差し引くことができます。つまりその分、税金が安くなります。遺産の総額が、基礎控除額を下回る場合は、相続税はかかりません。
相続税の計算方法
まず、遺産の総額から、基礎控除額などの控除額を差し引きます。差し引いた額が『課税総額』です。
例えば夫が亡くなり、妻と子ども2人(長男、次男)の合計3人が『課税総額1億円を相続する』場合は、『妻が1/2である5,000万円』、『長男が1/4である2,500万円』、『次男も1/4である2,500万円』というように法定相続分で分けたとしてまず一度分割します。
そのうえで、下記の早見表に基づいて、それぞれの相続税額を計算しましょう。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
- 妻:5,000万円×税率20%-控除額200万円=800万円
- 長男:2,500万円×税率15%-控除額50万円=325万円
- 次男:2,500万円×税率15%-控除額50万円=325万円
そして、家族全員分の税金を合計します。つまり、この場合の相続税の総額は、800万円+325万円+325万円=1,450万円となります。
そして、家族が受け取った遺産の割合に応じて、相続税の総額を分割します。法定相続分のとおりに実際に分割したとすれば、各々が負担する税金は以下のようになります。
- 妻:1,450万円×1/2=725万円
- 長男:1,450万円×1/4=362万5千円
- 次男:2,500万円×1/4=325万5千円
ちなみに、妻は『配偶者の税額の軽減』を受けられるので、この場合の税金は0円になります。
祭祀財産は相続税の対象外
家系図などの系譜、仏壇・仏具・お墓・墓地など祖先を祭るための財産のことを『祭祀財産』(さいしざいさん)といいます。
これらは一般的な資産と性質が違い、複数の相続人に対しての分割ができないことや、お金に換算できないものであるとして相続税の対象外となります。
墓石や墓所、仏壇は祭祀財産になる
祭祀財産の代表的なものに墓石や墓地があります。そして仏事に欠かせない仏壇、仏具も祭祀財産となります。
そのため、相続税の節税対策として生前に墓地や墓石、仏壇や仏具を購入しておくと相続税をその分、減らすことになります。
換金性の高いものは課税対象に
仏壇や仏具、お墓や墓地などはもともと高額のものが多いのですが、その性質から転売などはほとんどされません。
祭祀財産として認められ、課税されないことがほとんどですが、次のような場合には不当な税金逃れをしているとみなされ、課税対象外になることがあるので注意が必要です。
- 貴金属や骨董品としての価値を持つもの
- 純金製の高額な仏壇や仏具
- 明らかに不必要に広大な墓地の所有
相続と債務控除のしくみ
相続するものには、現金や不動産などのプラスの資産だけでなく、債務などのマイナスの資産も含まれています。ここでは、相続において、債務をどのように扱うのかを解説します。
債務控除とはマイナス財産を引くこと
債務控除とは、遺産の総額から、債務などのマイナス財産を差引くことです。例えば、以下のものが債務控除の対象になります。
- 銀行など金融機関からの借入金
- 個人からの借入金
- 病院への未払い医療費
- 所得税、住民税、固定資産税などの未納分
- 生前分の公共料金の未払い分
上記のような債務は、総資産額から引くことができる、つまり債務控除の対象になります。
葬式費用は債務控除の対象
借入などとは違うものの、『葬式にかかる費用』も債務控除の対象となります。しかし葬式にまつわるすべてのことが控除になるわけではありません。債務控除になるものと、ならないものの例を、以下に挙げます。
<債務控除になるもの>
- 死体の運搬などにかかった費用
- 葬式にかかった費用
- 火葬や埋葬の費用
- お通夜など葬式にまつわることでかかった費用
- お寺への読経料
<債務控除にならないもの>
- 香典返しにかかった費用
- 墓石・墓地などの購入、墓地賃貸料
- 初七日や四十九日法要にかかった費用
墓石の購入方法に注意
相続税が高額になる人の場合、節税対策として墓石を購入すると考える人は多いものです。
しかし、墓石の購入の仕方によっては相続税を減らすことができなくなってしまいます。それは『墓石をローンで購入して、完済する前に亡くなってしまった』場合です。
故人の借入金が債務控除の対象であることは先に述べましたが、祭祀財産である墓石は相続税の対象外であることから、ローンが残ってしまった場合は債務控除が受けられません。
生前に確実に支払いができる『現金』で祭祀財産を購入することが大切です。
まとめ
『うちはお金がないから相続税がかからない』と思って油断しないようにしましょう。見落としている預貯金や不動産などがないかをきちんとチェックしておくことが大切です。
もし相続税が課税されそうなら、墓石を購入するという対策も検討してみましょう。