親の介護で離職する人は年々増加傾向にあります。仕事と介護を上手く両立する方法はないのでしょうか。『介護で破産』となってしまう前に、今から考えておくべきポイントや、利用できる介護サービスなどについて解説します。
どうして介護で破産するのか
近年、『介護破産』という言葉をよく耳にします。親の介護などで収入や貯金が減り、最終的に生活が成り立たなくなってしまうという社会問題の1つです。
親の介護は誰しもが直面する問題だけに、なぜ介護で破産してしまうのかを知ることが大切です。
介護離職で収入減
『介護破産』が起こるきっかけとなるのが『介護離職による収入減』です。要介護度が高くなると、利用できる介護サービスは増えますが、だからといって介護の全てを他者に任せられるわけではありません。
正社員などのフルタイムで働く職場を離れ、週数回のパートタイムに変えると、年収が激減します。
特に、40代前後は職場で重要なポジションを担うことの多い『働き盛り』でもあります。この時期に離職をすることは、これまでのキャリアを手放すことになるといえるでしょう。
親の介護費用がかさんで自己破産
『介護離職での収入減』に追い打ちをかけるのが『介護費用の増加』です。日本には介護保険制度があり、要介護認定に合わせた介護サービスが受けられます。
限度額の範囲であれば、サービスにかかった費用が何割か負担されますが、それでも月々の負担額は少ないものではありません。
段差の解消や便座式トイレの導入など家の改修が必要な場合もあり、これらが積み重なることで、生活を圧迫していきます。
介護離職後の再就職の現実
一旦介護離職をすると、再就職は容易なものではありません。どのようなハードルがあるかを1つずつ見ていきましょう。
難しい再就職
介護が理由で離職した場合、正社員で再雇用される可能性は、男性で3人に1人、女性は5人に1人といわれています。特に、40歳以上で働いていない期間が1年以上になると、再就職のハードルは更に高まります。
介護を続けていくうちに、肉体的・精神的なダメージが蓄積し『働きたいのに働けない』、『社会復帰できるか不安』という悩みを持つ人も少なくありません。十分な収入が得られないことは、生活の貧困が長期的に続くことを意味します。
介護離職をすぐに決めてしまう前に、それが後悔しない選択なのかをよく考えることが大切です。
破産により資格制限を受ける職業もある
介護などによる費用がかさみ、『自己破産』という選択をする人が増えています。支払い不能となった際、裁判所に『破産申立書』を提出することで、借金をゼロにしてもらうという最終手段です。
全てがリセットされたように思えますが、社会には破産者を阻む様々なハードルが存在します。
破産者になると、たとえ資格があったとしても、弁護士、司法書士、宅地建物取引士、公認会計士、税理士などの職業には登録することができません。
資格が剥奪されるわけではありませんが、復権するまでの期間は登録ができないため、人によっては大きな負担となるでしょう。
旅行業者、警備員、生命保険募集人についても登録が拒否されています。
認知症などで介護が必要になる前に
親が認知症になった後、思わぬ金銭トラブルが発覚することがあります。元気なうちに、親の交友関係はもちろん、ローンや貯金額などを確認しておきましょう。
借金やローンがないか確認
早めに確認しておきたいのが、親に借金やローンがないかということです。認知症になるとほとんどの人が『身に覚えがない』となってしまいます。
保証人や連帯保証人になっていない限り、子供が親の借金を返済する義務はありません。しかし、認知症とわかっていながら貸付詐欺を行う悪徳業者も多く、後で子供に請求が来るといったパターンもないとはいえません。
親戚や友人にお金を借りている場合はもっと深刻です。親の借金といえども、返さないわけにはいかなくなります。親がしっかりとしているうちに、借金の有無を確認することは子供の責任といえます。
利用できる介護サービスを知っておく
国や市町村が実施している介護サービスをフル活用すれば、『介護離職』をしなくても済むケースもあります。
国の介護サービスは、介護給付(要介護1~5)と、予防給付(要支援1~2)が主ですが、それ以外にも市区町村で様々な地域支援事業を行っています。
収入が少ない人でも平等に介護サービスが受けられるような制度もありますので、まずは『調べる』ことから始めてみましょう。
介護施設の倒産が増えている
高齢化が進み、介護を必要とする人が増える一方で、介護施設の倒産が相次いでいます。その背景を探ってみましょう。
異業種から参入して失敗
介護業界は『今後成長が見込める産業』でありながら、倒産が相次ぐのはなぜでしょうか。その1つが、異業種からの参入が多いためだといわれています。
業界の成長を見込んで参入したものの、介護経営のノウハウがないために苦しい状況を打開できないのです。
また、各地に同じような施設が増え、予想通りの業績をあげられなかったというケースもあります。開業して間もない多くの小規模介護施設は苦しい状況に置かれています。
介護現場の人手不足
介護業界は、『給料が安くて、仕事が辛い』という状況から、慢性的な人手不足に陥っています。そのため、介護施設が増えてもベテランのスタッフが確保できず、十分な運営ができないというのが現状です。
人手不足は、サービスの質の低下をもたらします。介護従事者への報酬の見直しで給与が引き上げられることになったとしても、これは一部の人のケースです。新しい人材の確保やスタッフの育成には、まだまだ問題点が山積みといえるでしょう。
まとめ
『団塊世代』が大量に退職している現代、これまで以上に深刻な『介護問題』が浮上するでしょう。国は様々な政策を講じていますが、家族内で解決しなければならない問題も多いのです。
他人事と思わずに、今できることをしておきましょう。特に介護離職については、利用できるサービスをしっかり知っておくことで、無駄な『後悔』をせずに済むかもしれません。