介護施設や老人ホームでは、慢性的な人手不足が続いています。高齢化に伴い、利用者が増加したことから、施設の数も十分とは言えず今は在宅介護を選択する人も多くなってきました。在宅介護にかかる費用や、利用できる介護サービスについて解説します。
介護サービスの利用には要介護認定が必要
日本では40歳を過ぎたら、毎月『介護保険』を支払います。この介護保険により、寝たきりや痴呆など、自分が介護が必要になった時に社会全体で高齢者をサポートする『介護サービス』が利用できるようになるのです。
介護サービスを利用するには被介護者が『要介護』と認定されることが前提です。
要介護認定の基準は5段階
まずは、『その人にどの程度のサポートが必要か』を判断する必要があります。判断のものさしとなるのが次の5つです。
- 身体機能・起居動作
- 生活機能
- 認知機能
- 精神・行動障害
- 社会生活への適応
主治医の診断や、様々な聞き取りをもとに、コンピューターを使って『介護にかかると想定される時間』を算出します。厳正な審査を経て、最終的には介護を必要とする度合いが5段階(要介護1~5)で示されます。
要介護1と2は部分的な介護が必要な状態なのに対し、要介護3からは全面的な介護を必要とします。介護4と5は、介護なしでは日常生活及び意思疎通を行うのが困難な状態と認定され、介護に必要な時間(要介護認定等基準時間)も大幅に増加します。
認定の有効期間は、新規6カ月、更新12カ月と決められていますが、自治体によっても異なるので、確認するようにして下さい。
要介護1から5の方が受けられるサービス
要介護1~5の介護認定を受けると、各基準に応じた『介護給付』が行われます。介護5に近づくほど負担料金の上限が上がり、介護にかかる家族の金銭的な負担が軽減されるような仕組みです。
支給限度額は下記のように設定されています。
- 要介護1:165,800円
- 要介護2:194,800円
- 要介護3:267,500円
- 要介護4:306,000円
- 要介護5:358,300円
支給限度額の範囲内であれば、自己負担はかかった介護サービス費の1割または2割となります。
給付金で利用できるサービスは、デイサービス・デイケア・訪問看護・短期入所・福祉用具貸与などがありますが、実際に利用可能なサービスは自治体によって異なります。
ケアマネージャーに相談し『ケアプラン(介護サービス計画書)』を作成してもらうことが第一歩となります。
介護認定申請の流れ
このサービスを受けるには、必要とする家族がしっかりとした手順を踏み、申請をすることが必要です。認定申請はどのように行うのか、具体的な方法とその流れを説明していきます。
必要書類
介護サービスを申請するのに必要な種類は以下です。
- 要介護認定申請書
- 主治医意見書
- 介護保険被保険者証
- マイナンバーと身分証明書
要介護認定申請書は、市役所や、介護福祉センター、地域包括支援センターなどの窓口で入手できます。また、介護認定の審査時には、『主治医意見書』が必要となるので、予め医療機関に依頼して作成してもらうようにしましょう。
「介護保険被保険者証」は、65歳以上の人(第1号被保険者)に自治体から交付されるものです。被介護者が65歳未満の場合は、『健康保険証』が必要です。
申請を行うには市町村の窓口へ
介護サービスの窓口は、市町村の『福祉課』になります。自治体のHPなどには、申請方法などが詳しく記載されているので、出かける前に、確認することをおすすめします。もし、申請場所が分からない時は、市役所の総合窓口に聞いてみましょう。
申請は、本人がする必要はなく、家族や、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などに代行を頼むことも可能です。
申請が受理された後は、市町村職員による聞き取り(ヒアリング)やコンピューターでの判定が行われます。申請から認定までは1カ月ほどかかるので、焦らずに待ちましょう。
実際の費用の内訳は?
介護サービスが受けられるとしても、在宅介護でどのくらいの費用がかかるのか、初めての人は全く想像がつかないかもしれません。実際の費用の内訳を元に、かかる平均費用をシミュレーションしてみましょう。
要介護4で在宅介護にかかる平均費用
介護生活が長くなり、介護レベルが高くなればなるほど、在宅介護にかかる費用は増えていきます。では『動作能力が著しく低下して、日常生活全般を介護なしで行うことが困難な状態』といわれる介護4の場合はどうでしょうか。
例えば、1週間のケアプランとして、週1回のデイサービス、週1のデイケア、週1の訪問看護、30分程度の身体介護を12回ほど利用するとします。その他に介護に関わる用品の購入などを含めると、1カ月当たり、6万円前後はかかる計算になります。
介護施設の場合と比較
在宅介護ではなく、介護施設(特別養護老人ホーム)に入居した場合を考えてみましょう。施設によって具体的な費用は異なりますが、施設に対し、以下の費用を支払う必要があります。
- 介護サービス費
- 住居費
- 食費
- 日常生活費
介護サービス費は、要介護度上がるほど高くなります。要介護4の場合、食費や住居費なども含めて、月15万前後はかかると見た方がよいでしょう。
このように、在宅介護と比較すると、施設介護の方が圧倒的に費用がかかることが分かります。
費用証明書は確定申告で
介護をしている家族の負担を減らす制度の1つとして、確定申告での『医療費控除』が挙げられます。
介護サービス費用やおむつなどの購入費、施設に入居している場合は、居住費や食費なども控除の対象になるので、特に高額介護サービスを利用している家族にとっては大きな助けとなるでしょう。
申請には、在宅介護サービスや訪問入浴サービスから発行された『在宅介護費用証明書』が必要になり、金額や内容が明記されていることが必須となります。
どのくらいの額が控除になるかや、必要な書類、申請方法については、税務署などで確認するようにしましょう。
まとめ
身内の介護や、自分の介護は避けて通れない問題です。老老介護などがクローズアップされている今、自分にも相手にも負担がかからない介護方法を見つけることは必須といえるのではないでしょうか。
どのくらいの費用がかかるかをシミュレーションし、将来に備えておくことも大切です。