葬儀に参列したらお悔やみの言葉を、遺族になったらお礼の挨拶をしなければなりません。しかし、実際にどういった言葉を述べればよいのか、当事者にならないとなかなかわからないものです。葬儀にまつわる挨拶を遺族側・参列者側両者の立場で紹介します。
葬儀で遺族側が必要な挨拶とは?
葬儀では、喪主やその家族が、参列者にお礼を述べるシーンがいくつかあります。まずは、葬儀当日の一連の流れとあわせて、挨拶が必要な場面をおさえましょう。
遺族側の葬儀の流れ
まず、遺族は葬儀開式の1時間ほど前に会場入りし、担当者と最終的な打ち合わせや準備を行います。これと並行し、葬儀開式の15分前には参列者が着席できるよう、受付が開始されます。
時間になったら、僧侶の入場ともに葬儀が開式されます。その後、読経・弔電紹介・焼香と葬儀は進みます。僧侶が退室すると閉式です。出棺の準備を行い、遺族は火葬場へと移動します。
火葬後には、遺骨を骨壺に収める『骨上げ』いう儀式があります。骨上げが済むと、自宅(あるいは葬儀場)に場所を移し、読経・焼香を行う『還骨法要』が行われます。
最後に、僧侶や親戚、お世話になった方を招いた会食で葬儀一連の流れはおしまいです。この会食を『精進落とし』と言います。遺族は当日、この精進落としまで慌ただしく過ごすことになります。
遺族側で挨拶が必要な場面
遺族が挨拶をするのは、主に2回です。ひとつめが、葬儀の最後に行われる喪主(遺族代表)の挨拶です。参列者に向けて挨拶をするので、相応の人数を前にして話すことになります。
もうひとつは、火葬後に行われる『精進落とし』における挨拶です。僧侶をはじめ、火葬まで付き添っていただいた方が大半なので、比較的近しい人を前にした挨拶です。
また、葬儀当日は参列者に直接お悔やみの言葉をかけてもらうこともあります。そうした際には個別に参列のお礼を述べることになるでしょう。
お礼など葬儀後の挨拶は?
葬儀の受付など、当日手伝ってもらった方には、後日お礼をするのがマナーです。葬儀後1週間をめどに、お礼の挨拶をします。
また、弔電や供花・供物をいただいた方にも挨拶を忘れないことが大切です。間柄によっては電話で済ませることもありますが、お礼状を郵送する場合、お礼状に何か品物を加える場合などさまざまです。
パターン別挨拶例
葬儀での挨拶は『葬儀の参列に対するお礼』と『故人との生前のお付き合いに対するお礼』の2つが不可欠です。その際、故人の人柄がわかるようなエピソードを盛り込むのが一般的です。
故人との関係性ごとに、挨拶の例文を紹介します。
親が亡くなった場合の挨拶
親がなくなった場合の挨拶文例は以下の通りです。
「本日はお忙しいところ、父の葬儀にご会葬下さいまして、誠にありがとうございました。御弔意ならびに御香志を賜りまして、厚く御礼申し上げます。
父が若い頃には多くの苦労があったと聞いていますが、晩年を豊かに過ごすことができましたのは、ひとえに皆様方のご厚情の賜物と深く感謝しております。大往生ともいえる最期であったことは、息子として何よりの慰めでございます。
父亡きあとも、これまで同様にご指導ご鞭撻をお願いいたしまして、ご挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。」
一方、急逝した場合にはその様子を伝えることもあります。
「父は突然の病に倒れ、入院し、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
まだ65歳と若かっただけに、家族一同、亡くなるとは思いもしておりませんでした。幼いころから仕事熱心な父の背中を見てきただけに、今はただ父に恥じぬよう頑張らねばという思いでいっぱいです。
まだ若輩でありますゆえ、今後はより一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。本日は本当にありがとうございました。」といった具合です。
夫・妻が亡くなった場合の挨拶
配偶者が亡くなった場合には、故人への感謝の思いがうかがえるような挨拶が選ばれています。例文を紹介します。
「本日はお忙しいところ、妻○○の葬儀にご参列賜りまして、誠にありがとうございました。あわせて、生前のご厚誼に関してましても、故人に代わりまして御礼申し上げます。
結婚して40年、家庭のため、子どものために尽くしてくれた妻には、わたしも感謝の気持ちばかりです。これからは、子どもたちに支えられながら、妻の位牌を守っていく所存です。
今後とも、変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。」
若くして配偶者を亡くした場合には、以下のような挨拶がされることもあります。
「短い結婚生活ではありましたが、家庭を温かく守ってくれた妻には感謝の気持ちしかありません。妻自身も心の残りがあったかもしれませんが、多くの方々に見送っていただき、喜んでいることでしょう。生前中のご厚誼と合わせて、妻に代わりまして感謝申し上げます。
これからは男手一つで子どもたちを支えていこうと思いますので、より一層のご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。」
葬儀で参列者側が必要な挨拶とは?
一方、参列者としても挨拶は必要です。喪主や遺族と話をする際や受付での挨拶は、どのような点に配慮すればよいのでしょうか。
参列者側の挨拶はお悔やみの言葉
葬儀に参列した際の挨拶は『お悔やみの言葉』を用います。「この度はご愁傷さまでございます。心よりお悔やみ申し上げます」というのが一般的なお悔やみの言葉です。
他にも、「心よりご冥福をお祈りいたします」といった言いまわしを使うこともあります。故人と親しい付き合いがあった場合や、闘病中であることを知っていた場合には、「心より回復をお祈りしておりましたが、本当に残念です」などと付け足すこともあります。
お悔やみの言葉を述べる際は、あれこれと質問するのではなく、簡潔に述べるのがマナーです。差障りのない内容を心がけます。
使ってはいけない忌み語とは?
お悔やみの挨拶で避けるべき言葉に『忌み語(忌み言葉)』と呼ばれるものがあります。これは、直接的ではないものの、悪い意味を連想させる言葉のことです。
葬儀の場では「繰り返し」を意味するような言葉が忌み語に当たります。たとえば、重ね重ね・たびたび・再び・返す返す、といった言葉です。
また、いよいよ・くれぐれも、というように、繰り返す言葉も嫌われます。お悔やみの言葉では使わないようにしましょう。
まとめ
葬儀での挨拶は、遺族は感謝の気持ちを、参列者はお悔やみの言葉を述べるのが基本です。遺族の場合は、人柄を伝えるようなエピソードを交えて、故人を偲びます。一方、参列者の場合は、遺族の気持ちを推し量り、シンプルに済ませるのが無難です。