宅地や住宅などの金額が大きい財産を相続した場合、相続税がどのくらいかかるのか心配ではありませんか?配偶者の相続、住宅や宅地の相続では、相続税の軽減措置が適用となる場合があります。いざとなって慌てないように基本的な内容を知っておきましょう。
相続するときにかかる税金について
親族等が亡くなり、財産を相続した場合にかかるのが相続税です。これは持ち家を相続した場合にもかかります。
ただし、財産の全てに対して相続税がかかるわけではなく、課税対象額から控除を差し引いた額をもとに相続税額が決定します。
では、どのくらいの財産を相続したら、どのくらいの相続税を支払うことになるのか、具体的に見ていきましょう。
相続税がかかる場合
相続税には『基礎控除額』があり、相続する財産の総額から基礎控除額を引いた金額に対して、相続税が計算されます。つまり、相続財産の総額よりも、基礎控除額のほうが大きければ相続税はかかりません。
基礎控除額は法定相続人の数によって変わるので、法定相続人が誰なのかを知っておく必要があります。
必ず法定相続人になるのは、亡くなった方の配偶者です。続いて子供、子供がいなければ孫が法定相続人になります。亡くなった方に子供や孫がいない場合は親が、親もいない場合には兄弟が法定相続人になります。
相続税の計算とは
相続税の課税対象は、土地や建物、預金などの財産から、ローンの借入金・未払い金、通夜・葬式の費用などの債務を引いた金額です。
生命保険金や死亡退職金は非課税限度額を超えた分、土地は特例適用後の金額が対象です。ここから基礎控除を引いた額が、相続税の課税対象の総額です。
各人が法定相続分として相続したと仮定し、相続税の総額を計算します。このとき、法定相続の額によって、各人の税率と控除額は下記のように異なります。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税は大幅に減額できる
高額な印象の強い相続税ですが、誰でも適用できる基礎控除のほか、様々な軽減措置が適用される場合があります。例えば配偶者が相続する場合は、配偶者の税額軽減の特例、住んでいる自宅を相続した場合には、小規模宅地の特例が認められる場合があります。
これらの控除や軽減措置で、納税額を大幅に減らすことができます。
基礎控除について
相続税には『3000万円+法定相続人×600万円』までの基礎控除額があります。つまり、最低でも3,600万円は控除されるので、相続財産が3,600万円以下の場合は相続税を支払う必要はありません。
仮に課税対象額を1億4,800万円とします。これを妻と子供2人で相続すると、基礎控除は4,800万円なので、課税総額は1億4,800万円-4,800万円=1億円です。
これを法定相続割合で相続すると、下記が相続税の対象になります。
- 妻:1億円×1/2=5,000万円
- 子供1人につき:1億円×1/4=2,500万円
よって、相続税額は下記の金額になります。
- 妻:5,000万円×20%-200万円=800万円
- 子供1人につき:2,500万円×15%-50万円=325万円
配偶者税額軽減の特例
『配偶者の税額軽減の特例』とは、配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となる遺産の額が1億6,000万円まで、もしくは1億6,000万円を超えても配偶者の法定相続分までであれば、相続税が課税されないという制度です。
『配偶者の税額軽減の特例』は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。そのため特例を適用する場合は、相続税の申告期限までに遺産分割が済んでいる必要があります。
8割減額できる小規模宅地の特例
宅地の相続には『小規模宅地の特例』があります。特例を適用できるのは、配偶者もしくは適用条件を満たす子供が自宅敷地を相続した場合です。適用条件を満たす子供とは、亡くなった親と同居している子供、もしくは別居しているが、家を持っていない子供です。
『小規模宅地の特例』が認められると、自宅の敷地のうち、240㎡までの相続税評価額を2割にできます。
例えば、路線価が1平方メートルあたり20万円の地域に165平方メートルの自宅がある場合で計算してみましょう。
特例を適用しない場合の自宅敷地の相続税評価額は20万円×165平方メートル=3,300万円ですが、『小規模宅地の特例』を適用すると3,300万円×2割=660万円にまで下がります。
相続ではなく贈与にするケースも
多額の相続税がかかりそうな場合、生前贈与を行うことで相続財産そのものを減らし、相続税を減額することができます。この場合、贈与税を払うことになりますが、トータルで見た場合の税金が減らせるケースが多くなります。
また、相続は親族に限られるため、親族が少ない場合は様々な控除や特例を利用しても相続税がかかることがありますが、贈与は親族以外にも財産を渡すことができるため、上手に利用すると大きな節税につながります。
生前贈与の上手なやり方とは
生前贈与には『一般贈与』と『相続時精算課税制度』の2つがあります。そのうち一般贈与とは、1月1日から12月31日までを1年とし、毎年贈与していく方法です。
一般贈与には、贈与を受ける人一人当たり年間で110万円の基礎控除が受けられます。また、贈与を受ける対象者に制限はないため、親族以外にも財産を渡すことができます。
相続時精算課税制度を利用
『相続時精算課税制度』とは、60歳以上の人から20歳以上の子や孫へ贈与した場合、2,500万円の特例控除が受けられる制度です。
その年の1月1日時点で20歳以上の子や孫であれば、人数の制限はありません。2,500万円を超える部分については、一律に20%の贈与税を納める必要があります。
『相続時精算課税制度』を使った場合、相続が発生した時には、贈与価額も相続財産の中に加えて相続税を計算します。しかし、それまでに納めた贈与税がある場合は、相続税額から差し引かれます。
まとめ
相続は誰の身にも起こりうることで、それは突然やってくる可能性もあります。知らないばかりに多額の税金がかかって驚くことがあるかもしれません。相続になる前に、万が一のことを知っておけば、生前贈与などの対策をとることもできます。
難しいことは専門家に任せるとしても、いざとなってから慌てないように、相続や贈与に関する基本的な知識は知っておいたほうが良いでしょう。