通夜や葬儀、告別式などはそう頻繁に起きることではありません。そのため、いざという時、挨拶やマナーに戸惑う人も少なくありません。そこで、通夜や葬儀での喪主側・親族側・参列側の挨拶とマナーについて、またお礼状や挨拶状の文例を紹介します。
通夜、葬儀、告別式での喪主挨拶のポイント
まずは、通夜・葬儀・告別式での、『喪主(もしゅ)側』の挨拶のポイントを見ていきましょう。『喪主』とは葬式の際の当主であり、多くの場合、故人の配偶者が任されます。
喪主挨拶が必要となる場面
喪主の挨拶が必要となる場面には大きく分けて、『通夜』・『葬儀・告別式』・『精進落とし』の3つです。
『通夜』では、読経が終わった時や、通夜振る舞いが始まるときに挨拶します。たいていは『通夜振る舞い』の宴席に先立って挨拶します。
『通夜振る舞い』とは、通夜が終わった後に、弔問客を清めと供養の意味で料理やお酒でもてなす食事会のことを言います。食事の頃合いを見計らって挨拶することになるでしょう。
『葬儀』や『告別式』では、式の最中や閉式時に挨拶します。また『精進落とし』というのは、葬家が僧侶や関係者をもてなす会食のことで、ここでも喪主の挨拶が必要です。
喪主挨拶で盛り込むべき内容
喪主挨拶は難しく考える必要はありません。挨拶の内容はほぼパターン化しているので、盛り込むべき内容さえ把握していれば、自然と言葉が出てきます。
まず『自己紹介』は欠かせません。自分と故人との関係や故人の紹介をしましょう。次に『弔問へのお礼』です。参列してくれたことへの感謝と、故人が生前お世話になったお礼を述べます。
最後に、『残された家族に対しての力添え』をお願いして終了です。全部を3~4分ほどで言い終えられるとベストでしょう。不安なら、紙に書いて読んでも問題ありません。
喪主挨拶文例
喪主挨拶として参考になる定型文を幾つか紹介します。
まずは「本日は、お忙しいところを、○○の葬儀にご会葬くださいまして、誠にありがとうございます」といった言葉から始めます。
「このように大勢の方々にお見送りいただき、さぞかし故人も喜んでいると存じます」と述べた後、自分と故人の紹介を挟むこともできます。
故人との思い出や生前のエピソード、さらに「安らかな顔で息を引き取りました」など、亡くなった時の様子を簡単に説明するのも良いでしょう。
最後に「遺された私どもは未熟者ではございますが、今後とも故人同様、ご指導、ご鞭撻賜りますようお願いいたしまして、ご挨拶に代えさせていただきます」と締めくくります。
喪主挨拶で守るべき言葉のマナー
喪主挨拶のマナーで一番大事なのは、『言葉』に気をつけることです。葬儀には『忌み言葉』といって使ってはいけない言葉があり、それを挨拶に入れるのはNGです。
忌み言葉には、『彷徨う』・『浮かばれない』・『九』・『四』など、不吉なことを連想させるものがあります。また、『しばしば』・『たびたび』・『ますます』などの『重ね言葉』も、不幸が続くという意味に捉えられるので、葬儀では口にしません。
『死亡』・『生存』・『生きる』といった生死に関する直接的な言葉もマナー違反です。「大丈夫かな?」と気になる言葉があれば、事前に調べておきましょう。
通夜や葬儀での親族による挨拶のポイント
次は喪主以外が挨拶する時のポイントです。喪主ではないものの故人の親族が挨拶する場合と、親族ではない人が代理として挨拶する場合に、気をつける点を紹介します。
喪主に代わって挨拶をする
喪主が高齢であるなど何らかの事情で挨拶できない場合、代わりに別の人か挨拶することがあります。
誰が喪主の代わりをするかについては、特に決まりはありませんが、血縁関係がある人が行うのが一般的です。しかし、生前故人と仲良くしていた人や、故人をよく知る人物が代わりをつとめることもできます。
親族代表の挨拶の例
親族代表が挨拶する場合、基本的に内容は喪主が挨拶する時と変わりません。
例えば「遺族ならびに親族を代表いたしまして、皆さまにひと言ご挨拶を申し上げます。本日は、故○○の告別式にご会葬くださいまして、厚くお礼申し上げます」と始めます。
次に、故人との関係やエピソードなどを少しお話すると良いでしょう。「○○はこういう人でした」・「突然のことでまだ信じられません」などと話すことができます。
最後は「残されました家族に対しましても、ご指導・ご鞭撻を賜りますようお願いいたします」と、力添えをお願いすれば自然です。
喪主代理挨拶の例
親族以外が喪主を代理して挨拶する場合は、冒頭に自己紹介を忘れずに入れましょう。
「本日は、皆様方ご多忙中にも関わらず、故人のためにご会葬くださいまして誠にありがとうございました。私は、故人○○の(自分の立場)○○でございます」などの言葉で始めます。
「本来なら喪主○○がご挨拶申し上げるところではございますが、××の理由があるため、○○が代わりましてご挨拶申し上げます」と、代理をつとめる理由も簡単に説明します。
親族以外が喪主代理となると、参列者の中には「挨拶している人は誰?」と思う人もいるかもしれません。自分が喪主や個人とどういう関係なのか、今回なぜ喪主代理になったのかを、きちんと伝えてください。
通夜や葬儀に参列する際の挨拶とマナー
次に、葬儀に参列する側の、挨拶とマナーを紹介します。遺族にはどう声をかけたら良いのでしょうか。受付での挨拶や遺族への挨拶、守りたいマナーを考えましょう。
受付で香典を渡す際の挨拶とマナー
受付で香典を渡す際、特に相手が仕事関係やあまり親しくない人の場合は、挨拶とマナーにはいっそう気をつけなければなりません。
まず香典は、必ず『袱紗(ふくさ)』に入れていきましょう。そして受付で香典を渡す前に、「この度はご愁傷様でございます」と挨拶します。声をかける前に一礼するのを忘れないでください。あまり大きな声は出さず、静かに話すのがポイントです。
挨拶を終えると、袱紗から香典を取り出し、「ご霊前にお供えください」と受付に渡します。ここまでが受付での一連の流れです。
遺族への挨拶とマナー
遺族への挨拶は、シンプルに「この度はご愁傷さまでございます。心よりお悔やみ申しあげます」で十分です。面識のない場合は、一礼してすみやかにその場を立ち去りましょう。
またキリスト教では、死ぬことを神へ召されると考える宗派が多いので、「安らかなお眠りをお祈り申し上げます」と声をかけることもできます。
遺族への挨拶で守るべきマナーは、『余計なことを話さない』ことです。
死因を聞いたり、笑顔で世間話をしたりしてはいけません。また、例えば夫を亡くされた相手に対し、自分の夫や友人の夫の話をするのもマナー違反です。
葬儀のお礼状や挨拶状の文例
次は挨拶状やお礼状の文章です。こうした文章にはかしこまったイメージがあるので、書き方が分からない人も多いかもしれません。文例とともに紹介します。
香典返しに添える挨拶状の文例
『香典返し』とは、香典を受け取ったお礼に品物を送ることです。その際には、挨拶状を添えなければなりません。香典返しの挨拶状の文例は以下の通りです。
「謹啓
先般 (続柄)(俗名)葬儀に際しましてはご多用の中にもかかわらずご会葬を賜りかつご丁重なるご厚志を賜り誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげをもちまして○月○日に四十九日の法要を滞り無く相営みました
つきましては供養のしるしまでに心ばかりの品をお届け致しましたので何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます
本来であれば拝眉の上御礼申し上げるべきとは存じますが 失礼ながら書中を持ってご挨拶申し上げます
敬白」
香典や会葬のお礼、法要が無事に済んだこと、香典返しを送るというお知らせ、略儀ですませることのお詫びを書きます。一般的には、句読点は使いません。
弔辞を頂いた方へのお礼状の文例
『弔辞 (ちょうじ)』とは、葬儀の際に疲労する最後の別れの言葉です。故人とのエピソードや生前の業績などを讃えることが多く、たいていは故人と親しかった人に頼みます。
葬儀が終わると、弔辞をお願いした人にお礼状を出さなければなりません。その例文を見てみましょう。
「謹啓 先般 ○○の葬儀の折には、ご鄭重なるご弔辞を賜わりまして誠にありがたく厚くお礼申し上げます
これからも、皆様からお寄せいただきましたご厚情と、父の思い出を大切にして参りたいと存じております 末筆ながら、幾久しいご健康とご多幸をお祈り申し上げます 敬白」
弔辞に対しての感謝の言葉はもちろん、ちょっとした故人のエピソードを挟むこともできます。
供花や供物を頂いた方へのお礼状の文例
供花や供物を頂いた方へのお礼状は、近所であれば家に出向くか電話で済ませることもできますが、遠くから来てくれた人にはお礼状を送らなければなりません。
「故○○の葬儀に際しましては、ご丁重なる御厚志を賜り、厚く御礼申し上げます。
本来でしたら参上してご挨拶を述べなければならないところですが、略儀ながら書中をもって心より御礼を申し上げます」と、短い文章でも構いません。
葬儀に参列してくれた人に対しては、当日『会葬礼状』を渡しているのでお礼状は不要です。
葬儀のお礼メールへの返事は必要か
参列した葬儀へのお礼は、最近ではメールで済ませるのが一般的です。お礼のメールが来たら、丁寧に返信しましょう。
まず「件名:Re:葬儀参列のお礼」と、件名を変えずにそのまま返信します。
そして「〇〇様、この度はご丁寧に御礼のメールを頂き誠に恐縮でございます。この度は奥様のご訃報に接し、謹んでお悔み申し上げます」などと返信します。
または「おつらい心境かと存じますが、どうか気を落とさず、くれぐれもご自愛くださいませ。奥様が安らかにお眠りになるよう心からお祈り申し上げます。○○(自分の氏名)」などと、礼儀正しくメールを送りましょう。
葬儀後の会社への挨拶も忘れずに
身内の葬儀が終わり仕事に復帰する際にも、挨拶が必要な場合があります。葬儀のために仕事の休みをもらったり、会社から香典をいただくこともあります。社会人として、感謝の言葉をしっかりと伝えましょう。
香典を頂いた上司や同僚への挨拶
会社の上司や同僚に香典を頂いたのなら、手紙や電話よりも、その人に直接お礼を伝える方が良いでしょう。
上司には、「この度の○○の葬儀では、香典(弔電・供花)をいただき有難うございました。おかげさまで無事に母を見送ることが出来ました」と、きちんと挨拶します。
「また、お休みもいただき、ありがとうございました」と、休ませて頂いたことに対してのお礼も忘れないようにします。「今後、仕事も頑張ります」と言い添えてもいいかもしれません。
同僚に対しては、「お心遣いをいただき、ありがとうございました」と、素直に感謝の言葉を伝えましょう。
まとめ
『通夜』・『葬儀』・『告別式』での挨拶やマナー、そしてお礼状の例文などを一通り紹介しました。あまり窮屈に考えず、思っている言葉を丁寧に言葉にすれば十分です。
挨拶は、自己紹介、お礼、残された家族への力添えのお願いと、ほぼパターンが決まっているので難しく考える必要はありません。お礼状でも同じことが言えます。
感謝の気持ちを伝えることが一番大事なので、落ち着いて挨拶してください。