香典返しの相場をしっかり把握。基本の考え方やマナーについて解説

葬儀の基本

葬儀を行う立場になって香典をいただいたら、香典返しをするのが一般的です。香典返しにはいくつか種類があり相場もあります。ほかにも様々な決まり事があるので、この機会にマナーを確認しておきましょう。

香典返しとは通夜葬儀に参列した方へのお礼

お葬儀のフラワーアレンジ

香典返しとは、香典をいただいた方にお礼を返すことです。

香典は、故人の霊前にお供えするものという意味と、葬儀費用の一部にあててもらうために渡すもので、本来返す必要はないものとされていますが、日本では香典返しをする習慣が定着しています。

香典返しを贈るタイミング

香典返しは、忌明け法要(四十九日)が過ぎたあとに贈るものです。遅くとも忌明けから1カ月以内に贈るのが一般的です。

忙しいなか、葬儀に参列し香典を供えてくれた人に向けてのお礼と、『無事とどこおりなく弔事を終えることができました』という感謝の気持ちを込めて贈ります。

香典返しとして贈るものは、不幸が繰り返されないようにという意味を込めて、すぐ使ってなくなる消耗品・日用品などを贈るのが一般的です。

海苔やお茶・お菓子・コーヒー・タオル・洗剤・石鹸などが一般的ですが、最近は贈られる人が好きな品物を選べる、カタログギフトも選ぶ人も増えています。

お礼状を添えるのもマナー

香典返しを贈るときには、品物に必ず『お礼状』を添えましょう。

正式な書類などに使用される二重封筒は、香典返しには適していません。不幸が重ならないようにという思いを込めて、一重の封筒を選びましょう。華美な便せんは避けます。お礼状の内容の大まかな流れは次のとおりです。

  1. 故人の名前を入れて書き始める。『故 ○○儀』『亡母 ○○儀』など
  2. お礼の言葉
  3. 略儀であることを伝える(本来は直接会って渡すべきものだから)
  4. 日付と喪主名、『親族一同』と記入

文章の書き方は、以下の点に注意しましょう。

  • 句読点は打たずに縦書き
  • 『ますます』『つねづね』などの重ね言葉は、不幸が重なるイメージがあるため使わない
  • 『逝去』という言葉は敬語なので身内には使わない。『永眠』や『他界』にする

香典返しの相場

頂いた香典の半返しが一般的

香典はあくまでも故人の霊前へのお供えものであり、大切な人を亡くして不安な状況の喪家に対する『互助』の意味合いがあるものです。

そのため、いただいた香典の同額を返す必要はなく、『半返し』つまり半額相当の品物を返すのが一般的です。

香典は大抵3000円、5000円、1万円

地域によって違いがありますが、香典の実際の金額はおおよそ3種類に分けられます。

3,000円、5,000円、1万円の3種類の金額のいずれかであることがほとんどで、近所の方や会社関係の中でほとんどお付き合いのない方なら3,000円、付き合いがあって親しかった方なら5,000円や1万円が平均的な金額です。

人が亡くなることは決して喜ばしい出来事ではありません。気合を入れて多めに包むことは、かえって失礼になることがあります。

大阪など、関西は1/3返しが多い

関東と関西では香典返しの相場に違いがあるといわれており、大阪など関西では1/3返しが多いと言われてきました。

しかし、参列者は全国からやってくる時代になり、関東のように半返しにする人も少なくありません。半返しは、全国的に定着しつつあります。

わからないときは、あらかじめ親戚や友人など、地域の事情に通じた人に聞いてみるとよいでしょう。

故人が世帯主の場合も1/3返しで

一家の大黒柱である世帯主が亡くなった場合には、残された家族の生活面などを考えて香典返しは1/3返しでよいとされています。

それによって香典返しの負担をなくし、参列者の負担も減るというメリットがあります。

また、香典を払う側が『香典返し不要』という場合もあります。それも喪家に負担をかけさせたくない、支援したいという配慮から来ています。

5万円、10万円などの高額香典を頂いたら

故人との付き合いの深かった人や親族などが、遺族への支援の気持ちを込めて、高額な香典をお供えする場合があります。そんなときにふさわしい対応を紹介します。

親族の場合は半返しにこだわらなくてもよい

身内である親族では、5万円~10万円程度の高額な香典が支払われることは、珍しいことではありません。それだけ故人への思いや残された家族への思いが強く、互助の気持ちが金額になって表れているからです。

そのため親族への香典返しは半返しにこだわる必要はなく、1/3~1/4くらいを目安に返すなど、『金額を抑えた香典返し』を選択しましょう。

そのうえでお礼の気持ちをきちんと伝え、その後の様子を報告したり、残された子どもたちの元気な様子を伝えたりして安心させてあげましょう。

また、先方が辛い状況や苦しいときに言葉をかけたり、会って手助けをしたりなどの配慮によっても恩返しができます。

相手の気持ちを素直に受け取ることも大事

親族だけに限らず、故人の友人の親などからも思いがけず高額な香典をいただく場合があります。その金額は贈ってくれた相手の気持ちが表れているものなので、『半返しにこだわった香典返しをすると、かえって失礼にあたる』ことがあります。

香典を受け取った人の負担を考えて最初から『香典返しは不要です』と言ってお供えする人も多く、その場合も相手の気持ちを素直に受け取ることが大切です。その場合も、きちんとお礼状だけは忘れずに送るようにしましょう。

お礼を手紙で伝えることはもちろん、電話をかけたり、忌明けに落ち着いてから直接訪問したりなど、他の機会の時に少しずつ感謝の気持ちを表しましょう。

会社や職場の同僚への香典返し

会社や職場の同僚から香典を受け取った場合、会社単位でもらった場合と個人とでは香典返しの方法が違ってきます。仕事関係では社会人としてのマナーも関わってくるのでしっかりと覚えておきましょう。

会社の慶弔規定で受け取った香典の場合

故人の勤務先から所属団体名義で受け取った香典に対しては、経費から香典が支払われているため、香典返しの必要がありません。

『○○会社 代表取締役○○』というように会社名と社長名が明記されているものは、会社の慶弔規定に基づいて総務部などから福利厚生費として形式的に贈られている場合が一般的です。

しかし会社からなのか、社長個人からなのかハッキリわからない場合は、総務課などに直接問い合わせて確認しましょう。

また、会社の中の『○○課一同』『社員有志』などというように所属単位で香典を受け取った際には、自発的に香典を用意してくれたものである可能性が高いです。その場合はしっかりお返しをしましょう。

個人から送られた香典へのお返しと違って、大勢へのお返しなので、ビール券やお菓子など、大勢で分けられるようなものがいいでしょう。

個人名の場合は半返し

会社の同僚や上司などから、個人名で香典を受け取った場合には、『個人的なお付き合いとしての香典』ですので、お礼状を添えて通常どおりの半返しをしましょう。

『会社関係=香典返しは不要』というように勘違いして、今後の関係を損なうようなことがないように注意しましょう。

連名の場合は配りやすい菓子折りなどを

知人などから連名の香典を受け取った時には、1人当たりの金額は少額になるため、香典返しを個別に渡すのは難しくなります。そのため、半返しにはしません。

数名分がまとまって入っていて、中身が個包装になった菓子折りなどが喜ばれます。コーヒースティックやティーバッグ、ある程度日持ちのする個包装のお菓子など、配りやすいものを贈るようにしましょう。

親しい友人ならば直接手渡しでも構いません。

葬儀当日に渡す即日返しも増えている

香典返しは葬儀の当日に渡すこともできます。葬儀の帰りに参列者に直接手渡しをするため『即日返し』(当日返し)と呼ばれていて、近年はこの方法で香典返しを行う人が増えています。

即日返しにするメリット

香典返しの葬儀の日にすることには、次のようなメリットがあります。

  • 香典帳の整理をしなくていい
  • 香典返しの品物を選ぶ手間、発送の手間が省ける
  • 送料の負担がない
  • 香典の金額に関係なく一律の商品を贈るので計算が楽

このようなメリットや、香典返しの発送もれなどのトラブルを防げることから、香典の即日返しをする人が年々増えています。事務的な作業が苦手な人や、多忙で香典返しをきちんとできる自信がない人におすすめです。

相場は2,000円から3,000円程度

香典の多くは5,000円程度ということから、1/3返し~半返しと計算して2,000~3,000円程度のものが選ばれることが多いようです。

内容としては、お茶やお菓子、日用品の詰め合わせなどが多く選ばれます。また、『仏の世界に旅立つ衣装』として白装束と白いさらしを使っていたことから、白いタオルを即日返しとする人も多いようです。

高額の方は後日改めて対応する

5,000円の香典の方への即日返しとして2,000~3,000円程度の品物を渡しますが、それが1~3万円以上香典を渡した方と同じでは平等性に欠けてしまいます。

そのため香典の中身を確認したのち、例えば3万円の方なら半返しでは15,000円程度の香典返しになりますから、15,000円 – 3,000円で、差額分の12,000円程度のものを後日追加で贈りましょう。

しかし、金額が大きいと商品を選ぶのが難しい場合も多いため、贈った人が自分で品物を選べるカタログギフトで対応するのがおすすめです。商品券などのように具体的な金額がわかりにくいので贈る方も選ぶ方も抵抗感が少ないからです。

香典返しと会葬御礼品は別物

香典返しが香典に対してのお返しであるのに対して、『会葬御礼品』というものがあります。これは通夜や葬儀に参列してくださった方(香典の有無にかかわらず)へのお礼の品物のことで、香典返しとは別です。

相場は500円から1,000円程度

会葬御礼は『法要の帰り際に渡す引き出物』のようなもので、価格は500円から1,000円程度のものになります。香典返しのような高額な商品は選びません。

内容的にはハンカチやボールペン、商品券、コンビニカードなどの日用品が中心で、『清めの塩』とともにあいさつ状(会葬礼状)を添えたものを渡します。

忙しい中での用意が大変な場合は、葬儀社に依頼して、会葬御礼の商品選びと手配をお願いするのも良いでしょう。

葬儀社に会葬御礼品を頼む場合、価格帯の希望や、実際に使用した分だけで清算してほしいことなどを前もって伝えておきましょう。

北海道は会葬御礼品が香典返し

北海道は独自の風習や文化が根付いていることで知られています。受付での記帳がなかったり、香典に領収書が発行されたりするなど他とはかなり違いがあります。

香典返しについても他の地域とは異なり、会葬御礼品が、香典返しの役割を果たしています。配られる品物は1,000円~1,500円程度の海苔やお茶が中心です。

つまり、北海道で葬儀の帰りに渡されるものは『会葬御礼品であり香典返しでもある』ということになります。

香典返しの負担を少なくして、遺族のこれからに十分に役立ててほしいという、互助の精神が強い北海道人の気質によるものだといわれています。

ただし、北海道でも地域や遺族の方針によっては後日香典返しや即日返しをする場合もあります。

香典返しののし紙マナー

香典返しの品物に付けられている『のし紙』の使い方にもマナーがあります。思いがけない勘違いなどで、贈った相手に失礼のないようにマナーをチェックしておきましょう。

正しくは掛け紙

香典返しなどの弔事に使う贈り物にかけるのは『弔事用のし紙』という人がいますが、正式には『掛け紙』といいます。

そもそも『のし』というのは、のし紙の右上などに印刷されている『熨斗(のし)あわび』の印のことです。昔はあわびを干して薄く伸ばしたものを縁起物として贈った風習から来ているお祝いの印です。

香典返しなどに使うのは、『のし』の印が付いていないものを使用するので、『のし』ではなく『掛け紙』と呼ばれます。

ちなみに、蓮の絵が描かれた掛け紙も使用できますが、これは仏式専用です。キリスト教や神道などにはむいていませんので注意しましょう。

水引の選び方

香典返しに使う掛け紙の水引には、『結び切り』という形を選びましょう。

結び切りは『本結び』とも呼ばれ、水引を堅結びにしたものです。一度結ぶとほどけないような結び方なので、葬式などの『弔事は繰り返さず、一度きりで終わりにしたい』という思いが込められています。

香典返しの掛け紙に描かれている水引は主に『黒と白の結び切り』で、仏事全般に使われます。『黄色と白の結び切り』は、主に関西で仏事全般に使われる水引です。

結び切りではなく、蝶結びや花結びの水引は、香典返しには使用しません。蝶結びなどの水引は、何度も結びなおせるので『嬉しいことは何度あってもよい』という意味がこめられています。出産や進学などのお祝い事に使用します。

表書きの書き方

香典返しの表書きには水引の上に『志(こころざし)』と書きます。宗教に問わず弔事の時に使えるのが『志』であり、気持ちという意味があります。

その下には『○○家』など送り主の名前を書きますが、苗字だけでも喪主のフルネームを描いてもOKです。それぞれの地域の慣習によって違うので、わからないときは確認しましょう。

表書きは印刷する人もいますが、手書きの場合には筆ペンなどで記入します。薄墨で書く人も増えています。

また、似たような表書きとして『寸志』がありますが、これは目上の人から目下の人に対して渡す心づけという意味があります。弔事に使うものではありませんので間違えないようにしましょう。

一般的には志、名古屋や関西で違いも

香典返しの掛け紙の表書きは一般的に『志』が使われますが、関西地方では『満中陰志(まんしゅういんし)』が一般的です。『満中陰』とは四十九日の忌明けのことを指しています。

名古屋では『七七日忌明志(なななのかきめいし)』という表書きが使われる場合があります。『七七日』は四十九日のことです。いずれも『志』がつくことによって、忌明け後に香典返しを贈るという意味を表している言葉です。

まとめ

通夜や葬儀に参列してくれた方々に、お礼の意味を込めて贈るのが香典返しです。香典は互助の意味を持つ特別なお金であることを忘れずに、相手の失礼にならないよう、贈るときにはマナーや相場をしっかり把握しておきましょう。

ただし、地域や風習によって金額も送り方も違うので、心配な時はわからないままにせず、事前に葬儀社や、くわしい人に相談をしておくと安心です。

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