家族葬は多くの会葬者を呼ばずに、少数の親しい近親者のみでゆっくりと故人を偲ぶお葬式のことです。最近では家族葬を希望する人の声も聞かれるようになりました。本記事では、家族葬についての事前準備や段取り、おおまかな流れなどについて説明します。
家族葬とは
一般のお葬式では仕事関係のお付き合いなどで、あまり親しくない人も参列することがあり、参加人数も10数名から場合によっては100名を超す規模となります。
一方、家族葬は親族など近親者が中心となるシンプルで小規模なお葬式です。費用も比較的安く済み、世間体や義理にとらわれず弔問客の対応もないのでゆっくりと故人を偲ぶことができると言われています。
家族葬の準備
あらかじめ家族葬の準備をしておくと、いざというときに慌てずにすみます。まずは、できるところからチェックして必要な事項を整理しておきましょう。
葬儀社や遺影など選ぶ
どのようなお葬式にしたいかを日頃から家族で話し合い、下記の点に注意して希望に沿う葬儀社を事前に決めておくと、万が一のとき慌てずにすみます。
- 2社以上から見積もりをとる
- 内容を比較して、どの部分まで費用に含まれているかチェックする
- 希望する葬儀形式が可能か確認する
できれば複数の業者から希望に合った葬儀社を選ぶとよいでしょう。また、遺影も事前に用意しておくと、亡くなったとき、慌ただしく探すこともなくなります。きれいな写真を2~3枚選ぶとよいでしょう。
参列してもらう親族のリスト作成
親族のリストは、誰に連絡するかを把握するために、年賀状や住所録などで連絡先を確認しておきます。
確認範囲は参列が予想できる身内や本人が参列を望む親しい友人、およびお葬式後に事後連絡する人達となります。
連絡は電話でする場合、連絡網を作って1人でするのではなく親族にも手伝ってもらうと効率的です。親族で1度取り決めておくと、いざというときに混乱なく伝えることができます。
連絡はメールやFAXでもかまいませんが、返答のない人には再度電話などで確認するために、リストにチェック欄を加えておくと便利です。
必要となる費用の確保
家族葬は費用負担が比較的軽いお葬式ですが、葬儀費用とお布施料や戒名料を含めると最低でも50万円から100万円は必要となります。
費用の確保や負担軽減として次のようなものがあります。
- 葬儀社や互助会の積み立てサービスを利用
- 生命保険に加入
- 生前に葬儀費用を家族で話し合い、負担について決めておく
本人が亡くなった際は、本人の口座が凍結される可能性もあります。そうなる前に事前に費用分を現金で家族が預かることで費用を確保するのもよいでしょう。
葬儀社でカードやローンの扱いがある場合、分割払いを利用して当初の負担を軽くする方法もあります。
ご臨終されてからの流れ
ご臨終から家族葬までは、諸連絡や手続き、葬儀社との打ち合わせなど慌ただしく物事が進みます。ここでは具体的な流れを見ていきます。
葬儀社に安置所まで運んでもらう
病院でご家族が亡くなったら、葬儀社に連絡し、葬儀社から来た寝台車などの搬送車で遺体を自宅や安置施設(※)などの安置所まで運んでもらいます。自宅に運ぶ場合は、事前に部屋の掃除と安置する場所を確保します。
(※安置施設とは遺体を一時的に安置する施設で、葬儀式場などに設置されているケースが多い。)
事前に葬儀社が決まっていないと、病院からの紹介かその場で自分で調べた葬儀社に依頼することになります。
この場合、業者には自宅への搬送のみを依頼し、葬儀に関しては金額や内容を見て余裕をもって葬儀社と交渉して決めるのがよいでしょう。葬儀社の安置施設に搬送すると、ほかの葬儀社への変更がしづらくなることもあります。
役所に死亡届を出し、火葬許可証を受けとる
手続きには死亡診断書が必要となります。病院で亡くなった場合は、入院先の医師からもらいます。自宅の場合は、かかりつけ医師に来てもらい死亡診断書を書いてもらいます。
死亡診断書の左側半分は死亡届になっており、本籍地を記入する欄があるので、事前に本籍地がわかるようにしておきましょう。死亡届は下記の内一ヶ所に提出します。
- 死亡地の市町村役場の戸籍係
- 死亡者の本籍地の市町村役場の戸籍係
- 提出者の住所地の市町村役場の戸籍係
死亡届を提出するときに死亡診断書を添付します。死亡診断書は後に相続手続きなどで必要になることがありますので、提出前に何枚かコピーすることをお勧めします。
死亡届提出時、火葬許可申請書も同時に提出し火葬許可証をもらいましょう。許可証は火葬のときに必要となります。
葬儀社と打ち合わせする
葬儀社との打ち合わせ内容は、通夜や告別式の日程・葬儀内容・遺影の手配・火葬場所など多岐にわたります。
喪主や施主の精神面での負担を考え、1人での対応ではなく複数人で打ち合わせをし、今後することの分担なども決めるとよいでしょう。
家族が亡くなって慌ただしいときですが、葬儀社と内容をつめて後々後悔がないようにします。
また、今後葬儀までにすることや、葬儀に呼ばない人達への報告方法など、わからないことや疑問点なども相談し、あやふやな状態で葬儀を迎えないことが大切です。
指定の寺がなければ葬儀社と相談
菩提寺が決まっている場合は、お寺に連絡し葬儀日程や会場を伝えますが、菩提寺が決まっていない場合は葬儀社に相談しましょう。多くの場合、宗派を告げると近くにあるお寺を紹介してもらえます。菩提寺とは、先祖代々のお墓や位牌をおまつりしてあるお寺のことです。
お布施料は葬儀社に尋ねるとその地域の相場がわかります。葬儀社によっては、提携しているお寺のお布施料(戒名料込み)を、定額で提示している場合もあります。
家族葬の流れ
家族葬の流れは一般のお葬式とおおまかな点では変わりありません。しかし、親しい家族や親族が中心の家族葬では、受付を設けない、挨拶を省くなどシンプルなものとなる傾向があります。
お通夜
お通夜の開始時間は午後6時前後にするケースが多く、これは通常の通夜と変わりはありません。しかし、参列者が親族のみで少人数の場合は、開始時間も話し合いで早めたり、遅くしたり臨機応変に決めることもできます。
通夜にかかる時間は、参列者も少なくお焼香などの時間が短いため、通常よりも早く終わる傾向にあります。
しかし、逆に会葬者が少ない分、故人との最期の時間をゆっくり過ごしたり、好きだった音楽を流したり、通夜後の食事で生前好きだった料理や飲み物を用意したりするなど、通常の葬儀よりも形にとらわれない偲び方もできます。
告別式
告別式の開始時間は午前10時から11時頃で、一般の告別式と変わりありません。開始時間は火葬時間との兼ね合いで決められます。
告別式にかかる時間は通夜と同じく参列者が少ない分短めですが、お別れに趣向をこらした場合などはその分長くなります。
故人の愛用のものや思い出の品を柩(ひつぎ)に入れたり、故人あてのメッセージや寄せ書きなど入れたり、家族なりの見送りで出棺を待つことになります。
通夜をなくし、1日でとりおこなう場合も
家族葬は通常の葬儀と同じく通夜と告別式を行うことが一般的ですが、最近では通夜を行わない1日葬も見られるようになってきました。
家族葬の参列者は近親者のみなので、一般会葬者を気にする必要がないことが理由の一つと言われています。ほかにも下記のような理由が考えられます。
- 遺族の精神的、身体的負担を抑えるため
- 葬儀経費や食事代、宿泊費の軽減のため
- 2日連続の葬儀に出席できない親族が多いため
まとめ
家族葬は故人とのお別れがゆっくりでき、また参列者が少数のため本人や家族の意向が反映しやすいお葬式です。世間体や義理を気にしないでとりおこない、費用を軽減することもできます。
家族葬に関する葬儀社の選択や手続き、葬儀の流れを事前に確認すれば、いざというときにスムーズに事を運ぶことができるでしょう。今後の葬儀の参考になれば幸いです。家族葬についてもっと知りたい方はこちらを参考にしてください。