密葬は一般葬と違う。やり方や費用を含めてくわしく解説します

葬儀の基本

『密葬』というと、少人数でひっそりと執り行われる『小規模な葬儀』という印象を持つ人も多いでしょう。近年増加傾向のある『家族葬』とはどこが違うのかご存じですか?密葬の特徴や、葬儀にかかる相場、メリットとデメリットについて詳しく解説します。

一般的なお葬式の種類

様々な葬儀形式の中で、一般的なのが『一般葬』です。その他、比較的大規模に行われる葬儀には『社葬』や『合同葬』などがあります。密葬について知る前に、一般的な葬儀の種類について解説します。

一般葬 

日本では90%以上が仏式葬儀です。キリスト教や神道などもありますが、ここでは、仏式の一般葬儀に特化して説明します。

『一般葬』は、1日目に通夜、2日目に告別式を執り行います。親戚や会社の同僚、近所の人など、故人と関わりのあった一般の方が幅広く参列するのが特徴です。

多くの人が参列するため、香典収入は増えますが、遺族側は、香典返しや弔問対応に忙しくなるでしょう。『故人が多くの人に見送られている』という姿に、励まされる遺族もいるようです。

社葬や合同葬

会社の代表者や重役、会社に貢献した人が亡くなった場合は、会社が運営主体とした『社葬』が執り行われます。

一般葬の場合は、身内が喪主をつとめますが、社葬では『葬儀委員長』が場を取り仕切ることが多く、故人とのお別れを偲ぶことに加え、故人の生前の業績に感謝し、その遺志を引き継ぐ儀式や、社外への広報活動のような役割も果たしています。

『合同葬』は、会社と遺族が合同で執り行う葬儀のことです。つまり、家庭で行う『家族葬(密葬)』と、会社で行う『社葬』を分けずに、一緒に行うということです。また、複数の団体が協力して行う葬儀のことも合同葬とよばれます。

社葬も合同葬も、参列者の人数が多く、大々的に執り行われます。

縁の近い人たちだけで行う密葬とは 

多くの人が参列する『一般葬』や、大規模に行われる『社葬』や『合同葬』に対し、縁深い人達のみで執り行われる葬儀を『密葬』といいます。

言葉だけを見ると『家族葬』に近いものに感じるかもしれません。2つの葬儀の違いについても説明します。

密葬の意味

『密葬』は、ごく親しい人や家族のみで行われる葬儀のことを指します。密葬は『本葬』と対にして考えることが多く、大勢が参列する『本葬』を行うことを前提に、最初に内輪だけで密やかに葬儀を執り行うということなのです。

例えば『社葬』など、対外的且つ大々的に行われる葬儀の前に、家族や近親者で『密葬』を行うといったケースがあります。

そもそも密葬を執り行うのは、著名人や会社の重役が多く、参列者が多すぎると葬儀の準備に時間がかかるという背景があります。密葬で火葬までを済ませておき、『お骨』を前に本葬(告別式・お別れ会)が執り行われる方がスムーズなのです。

『人数が少ない=密葬』というわけではありませんが、現在は通常と比べて小規模に行われる葬儀を指すことが多くなっています。

家族葬とは

家族葬と密葬は、通常よりも規模が小さいことや、近親者が中心で執り行われるという点では共通しています。

しかし、密葬は、『本葬』に先駆けて行われる意味合いが強く、それだけで葬儀が完結する『家族葬』とは似て非なるものといえるでしょう。よって、通常は「密葬を行いました」というと、次に『本葬』があることが予想されます。

以前は『家族葬』という言葉はありませんでした。しかし、時代の流れにより『小さな葬式』や『本葬を伴わない密葬』を挙げる人々が多くなり、本来の意味の『密葬』とはっきり区別するために『家族葬』という言葉が生まれたといわれています

密葬のやり方

密葬はどのように執り行われるのでしょうか。葬儀の流れや、葬儀に呼ぶ人の範囲について説明します。

流れは一般葬と同じ

本葬の前に内輪で行われる密葬は、参列者が限定されるため、一般葬にくらべ費用が抑えられるというメリットはありますが、基本的な流れは『一般葬』と大体同じになります。

密葬では、通夜、葬儀、告別式、火葬までを全て行います。火葬が済むと、本葬の一般参列者は、故人の亡骸とは直接対面できないということになります。その点、親戚などの理解を得た上で密葬を進めることが大切です。

葬儀に呼ぶ人の範囲

密葬は、本葬よりも小規模に行うというだけで、明確な人数や誰を呼ぶかの定義は定められていません。親戚の数や、故人の交友関係の広さにより、数人で行う場合もあれば、50人、100人で行う密葬もあるということになります。

注意すべきなのは、密葬は内輪以外に伝わらないよう内密に執り行うということです。本葬に参列する人や他の人に伝わると、遺族側は対応に追われることが予想されます。

本葬を控えているとしても、「故人と付き合いがあるのに、なぜ呼んでくれないのか」と気分を害する人や「直接お別れがしたかった」と悔やむ人もいらっしゃるでしょう。

直系の親族や家族だけで執り行う時は、必ず他の親戚や近親者に『故人の意思で密葬を行う』ということをはっきり伝え、理解を得ることが必要です。

密葬の値段について

密葬は、一般葬と同じ流れで2日間執り行われます。一般葬と費用を比較しながら、密葬にかかるのはどれくらいなのかを見ていきます。

一般的に費用は安くなるとはいわれるものの、抑えられる費用とそうでない費用があります。

密葬の費用相場

密葬と一般葬は、葬儀の流れは同じですが『参列者の人数』が異なります。

通夜ぶるまいや精進落としの飲食費、香典返し、会場の規模、車両費、菓子代など、参列者の人数によって変動する費用を『変動費』といいますが、密葬では、これが一般葬の半額~4分の1に抑えられる可能性があります。

一方で、祭壇や会場の使用料などの『固定費用』は、一般葬とそれほど大きく変わりません。

密葬の費用相場は30万円~100万円となっています。平均相場に差があるのは、通夜や告別式を伴わない『直葬式』や、家族のみで行う『家族葬式』の密葬が増えているためです。

一般葬の費用相場

お通夜、葬儀、告別式、火葬を行った時の一般葬の平均相場は約120~150万円前後となっています。

内訳は、祭壇、会場設備、車両などの『葬儀一式費用』が費用の約半分を占め、続いて『飲食接待費用』が費用の2割~3割程度を占めます。

祭壇や会場、提供する料理などにはそれぞれグレードがあり、何を選ぶかによって費用は変動します。また、ここには含まれていませんが、寺社への『お布施』も必要になってきます。

葬儀の形式で費用が変わる

近年の密葬は、身内のみでよりコンパクトに執り行う形式が多くなっています。密葬には主に『家族葬形式』と『直葬形式』の2つのスタイルがあり、一連の流れや費用が異なります。

家族葬形式

『家族葬』とは、葬儀参列者を家族や身内に絞り、小規模に行う葬儀のことです。よって、密葬における『家族葬形式』とは、家族葬同様に、家族・身内のみで小規模に執り行うという意味になります。

家族葬形式で行う利点は、他の会葬者を気にせず、ゆっくりとお別れができることでしょう。身内に限定されるため、葬儀にかかる『おもてなしの費用』なども削減できます。

流れは『一般葬』と変わらず、お通夜・葬儀・告別式・火葬が執り行われます。家族葬の一般相場は50万~100万ほどとなっています。

直葬形式

一般葬と同じ流れで行う『家族葬形式』と比較し、『直葬形式』は費用を30万円前後に抑えることができます。

直葬形式は、『通夜』と『告別式』を省き、火葬のみを行う最もシンプルな方法です。『本葬』で大規模な告別式やお別れ会をすることを見込んで、「密葬は費用を抑えて行いたい」という人が直葬形式を選ぶことが多いようです。

人を招くことも祭壇を飾ることもないため、経済的負担がないことと、余計な気遣いをしなくてもよいことが最大のメリットです。

密葬のメリット

本葬に先駆けて、密葬を行うメリットはどこにあるのでしょうか?2つの大きな利点について見ていきましょう。

落ち着いて葬儀を行える

密葬は、社葬や合同葬、著名人の葬儀など、大規模な葬儀の『前提の葬儀』として執り行われます。

参列者が多いと、遺族側は対応に追われ、故人とのお別れの時間をゆっくりとることができません。参列者や僧侶への気遣いばかりで、肝心の供養が疎かになってしまうということもあります。内輪だけで行う密葬は『心を込めて故人を供養できる』のがメリットといえます。

また、家族葬や直葬は小規模ながら1回で完結する『本葬』です。葬儀に呼ばれなかったことに納得がいかない人もいるかもしれません。

密葬は『葬儀を公にせずに執り行う』という意味合いがあり、且つ本葬を控えているため、「密葬が終わった」という報告をしても大きな問題にはならないでしょう。

本葬の準備に時間をとれる

密葬では、お通夜から火葬までを全て済ませてしまうため、『本葬』は、故人のお骨を前に執り行われます。

本葬は、死者があの世に行くと言われる『四十九日前』までに行うのが通常です。遺族は、本葬の準備に集中して時間を使うことができ、当日も『お別れ会』や『告別式』のみに集中することができるといえるでしょう。

当日及び当日までの準備に伴う遺族側の精神的、肉体的な負担が大幅に軽減されるというメリットがあります。

密葬のデメリット

『密葬』だけを単体で見ると、メリットが多いように感じますが、その後に控える『本葬』のことも含めて考えれば、良いことばかりではないのが現実です。密葬を決める前に、考えておくべきことを説明します。

葬儀が2度になる

最近は、『本葬を行わない密葬=家族葬』が増えていますが、基本的には、密葬と本葬はセットとして考えます。

1つの葬儀を2回に分けるメリットは大きいものの、やはり葬儀が重なることは、遺族や親戚にとっての負担になります。

特に、仕事や用事をキャンセルしなければならない、遠方から泊りがけで来なければならないということになると、経済的・体力的にも影響が出てきます。また、葬儀社との打ち合わせ時間も必然的に増え、四十九日が終わるまでは気が抜けない状態が続くといえます。

このような理由から、参列者が多数見込まれる場合でも、葬儀を2度に分けずに1度の大規模な葬儀で済ませてしまう遺族もいらっしゃいます。

費用がかさむ

葬儀を2回に分けて執り行うということは、『密葬にかかる費用』と『本葬にかかる費用』がそれぞれ発生します。

直葬形式の密葬であれば、費用を抑えることができますが、『故人とのお別れの時間をしっかりとりたい』という家族は、やはり一般葬と同じ流れで葬儀を行うのがベストと考えます。

一度葬儀が終わったと思っても、また会場の予約をしたり、会葬者のおもてなしを考えたりと費用がどんどんかさんでいきますので、遺族の中には、たとえ大規模になって慌ただしくなったとしても、一般葬儀で完結させたいという人が少なくありません。

時間にも金銭面にも余裕があり、且つ『故人が密葬を望んでいる』というケース以外は、2度葬儀を行うのはなかなか難しいかもしれません。

密葬を知った時の注意点

ここからは、参列者側の立場で『故人の密葬を知った時』の対応について見ていきましょう。密葬のほとんどは、公にされずに密やかに行われます。

密葬をすることを選んだ遺族側の気持ちを考えながら、『マナー違反』といわれないような行動しましょう。密葬を知った時の注意点を4つに絞って解説します。

弔電は送らないほうが良い?

遺族以外の誰かから、間接的に知らせ聞いたという場合は、弔電を送るのは控えましょう。遺族側は、表立ったことを避けたいのが本音です。「公にしていないのになぜ?」と不快に思ってしまうかもしれません。

密葬の知らせは、身内や近親者などの限られた人のみに送られます。もしも、遺族側から直接お知らせを受けた場合、哀悼の意を込めて弔電を送ることは問題ありません。

しかし、弔電を送らなくてもマナー違反となりませんので、故人との関係の深さなどから考慮するようにして下さい。

香典は辞退される場合も

密葬では、香典のマナーにも気をつける必要があります。通常の葬儀では、会葬者は香典をお供えするのが一般的ですが、密葬では喪主側から『香典は不要』と辞退される場合があります。

『葬儀の案内』に「香典、ご供物、ご供花の儀はご辞退申し上げます」と記載されていた場合は、香典は必要ありません。

密葬という形を選ぶ背景には、香典返しや弔問などを省いて、できるだけシンプルに葬儀をしたいという意図があります。その気持ちを尊重して、無理に香典を渡して帰ってくるということは避けたいものです。

香典自体の旨が特に記載されていない場合は、香典を持参するのが一般的です。

会社関係者は参列しない?

密葬に呼ばれるのは、親戚や、故人のごく親しい人で、その他の人に対して『葬儀の情報は非公開』とされることがほとんどです。

会社関係者やビジネス上の付き合いの人は、密葬ではなく、本葬のお別れ会や社葬に出席するのが通常なので、連絡がないからといって自分から伺ったりしないようにして下さい。

また、「仕事でお世話になったから弔電だけでも送りたい」という方は少なくありません。しかし、葬儀の知らせを遺族から直接聞いていないのであれば、弔電も控えるのがマナーです。

服装は一般葬と変わらない

密葬での服装は一般葬と変わず、『喪服』を着用します。喪主をつとめる遺族側は、『正喪服』とよばれる一般参列者よりも格上の喪服を着用しますが、それ以外の人は、『準喪服』というブラックフォーマルを着用するのが通常です。

女性の場合は、漆黒のアンサンブルかワンピーススタイルが理想です。装飾が少なく、膝が隠れるくらいのスカート丈のものを選びましょう。アクセサリーは基本不要ですが、どうしても付けたい場合は真珠のネックレスにとどめておきましょう。

和装の喪服の場合は、結婚指輪以外、アクセサリーの一切は不要です。

男性は、ビジネススーツではない漆黒のフォーマルスーツを着用します。ワイシャツは白無地、ネクタイ・ベスト・靴下は全て黒で統一しましょう。

まとめ

密葬は、単なる『小さなお葬式』ではありません。葬儀を執り行う側は、葬儀にかかる手間や費用、その後に続く『本葬』を含めて、じっくりと検討したいものです。

密葬と通常の葬儀では、香典や弔電、弔問のルールなどに違いがあります。『内密に執り行われる』という意味において、周囲の人が自分の気持ちを遺族に押し付けることは、思わぬ反感を買ってしまうこともあるでしょう。

立場をわきまえて行動することが大切です。

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