老後の国民年金や厚生年金を受け取るために『年金手帳』は必要不可欠です。しかし年金手帳が一体どんなものか良く分からないという人も多いのではないでしょうか。ここでは年金手帳のあれこれや発行方法などわかりやすく解説します。
年金手帳ってなに?
そもそも年金手帳とは、公的年金制度に加入すると交付される手帳のことです。年金手帳には、氏名・生年月日・性別や基礎年金番号、加入した年月日などが記載されています。
国民年金から厚生年金、又はその逆の切り替えや年金の請求手続きに使うので、とても大切なものです。紛失しないように厳重に保管しておきましょう。
記載されている基礎年金番号とは
年金手帳に記載されている項目『基礎年金番号』は、日本年金機構が年金加入記録を管理するための番号です。1人につき1つの基礎年金番号が割り当てられます。
基礎年金番号は4桁と6桁の合計10桁からなる番号で、平成8年12月までは国民年金・厚生年金保険・共済組合の各年金制度によって番号が違いました。
しかし、退職・転職などで番号が複数になってしまい、番号の照会に時間がかかってしまうため、平成9年1月から1つの基礎年金番号にまとめられました。
共済組合の人は基礎年金番号通知書のみ
基礎年金番号は国民年金・厚生年金保険・共済組合といった公的年金制度に適用される番号ですが、共済組合の人のみ『基礎年金番号通知書』が送付されます。
平成8年12月以前に共済組合に加入していた人の番号は、共済組合が独自に設定した7~12桁の番号でした。そのため共済組合にしか加入していない人には『基礎年金番号通知書』で知らせる処置が取られました。
年金手帳は発行された年代により色が異なる
現在のように年金手帳が1つになる前は、年金制度ごとに違う手帳が発行されていた時代もありました。
現在でも使用されている年金手帳の色は茶色・オレンジ色・青色と3色あります。それぞれの色で発行された年代が分かるので覚えておきましょう。
茶色の手帳
茶色の手帳は『国民年金手帳』と呼ばれており、国民年金の被保険者資格を取得した際に発行された手帳です。
1961年に国民年金の制度が始まってから、1974年に国民年金と厚生年金の手帳が1つになるまでの期間の間発行されていたので最も古い手帳となります。
1961年~1974年の間、5年間隔で手帳の色が変わっていたこともあるので、茶色以外にも薄オレンジ色や水色なども存在します。
この茶色の手帳は、1940~50年代の生まれの人が持っていることが多いです。現在の高齢の者の多くは、茶色の国民年金手帳を持っているでしょう。
オレンジ色の手帳
オレンジ色の手帳は、1974年の11月から1997年1月まで発行されていた年金手帳です。1974年の11月は、被保険者証の共通化が導入された日で、オレンジ色の手帳は国民年金・厚生年金が一緒になっている手帳です。
これで国民年金から厚生年金に変更する際に、新しく年金手帳を発行する必要がなくなりました。
オレンジ色の手帳には基礎年金番号が記載されていないので、別途基礎年金番号通知書が配られているはずです。オレンジ色の手帳をお持ちの人は、基礎年金番号通知書で基礎年金番号を確認しておきましょう。
青色の手帳
青色の年金手帳は、1997年1月に基礎年金番号が導入されてから現在に至るまでの手帳です。基礎年金番号が記載されて発行されるので、すべての公的年金に対応しています。
また、平成22年1月まで年金の管理は社会保険庁が運営していました。しかし、平成22年1月以降は日本年金機構が発足されて業務が移管されました。
そのため平成22年1月以降の手帳は表紙の下に『社会保険庁』ではなく『日本年金機構』と書かれています。日本年金機構になっている年金手帳が最も新しい手帳です。
年金手帳はどのように発行されるのか
年金手帳はどのようにして発行されるのでしょうか。発行される条件を見ていきましょう。
20歳の誕生日前に必要書類が届く
20歳の誕生日の前月に、日本年金機構から『国民年金被保険者資格取得届書』が送付されます。必要事項を記入して、近くの市(区)役所または役場、年金事務所に提出してください。
必要事項に記入する項目は、保険に加入する本人の氏名と生年月日、性別、住所など基本的なことばかりなので難しくはありません。
万が一、国民年金被保険者資格取得届書をなくした・届かないといったトラブルが発生した場合は、近くの市(区)役所や年金事務所に電話で問い合わせしてみてください。
場所によっては取りにいかなければならない場合もありますが、可能であれば再度送付してくれるでしょう。
国民年金第1号被保険者は保険料を納入
第1号被保険者は、毎月保険料を支払わなければなりません。第1号被保険者とは、国内に住んでいる20歳以上60歳未満の学生・自営業者・無職の人が対象です。
保険料の支払いは、国民年金保険料納付書で納める方法の他に、金融機関やコンビニエンスストアでの納付、インターネットバンキングでの納付も可能です。
また口座振替やクレジット納付など便利な方法もあるので、自分に合った納付方法で保険料を支払いましょう。おそらくほとんどの人が口座振替にしているのではないでしょうか。
保険料を納める手続きが遅れると、国民年金保険料の前納期間が短くなったり、年金の受給条件を満たさなくなったりとデメリットしかありません。
年金をしっかりもらいたい場合は、誕生日から14日以内までには手続きしておきましょう。
学生には学生納付特例制度も
基本的には20歳からは保険料を払わなければなりませんが、学生の場合は『学生納付特例制度』の手続きをすることで、在学中の保険料の納付が猶予されます。
しかし、学生全員が『学生納付特例制度』を受けられるということではありません。制度が受けられる条件は、本人の所得が一定基準以下の場合のみです。
所得基準はその都度変更になるので、年金事務所に問い合わせてみてください。学生納付特例制度を受けるには本人の年金手帳と学生証が必要です。
なぜ年金手帳を会社に提出するのか
入社時に、会社から年金手帳の提出を求められます。入社すると健康保険や厚生年金に加入しなければならず、これらの加入の際に『基礎年金番号』や氏名、生年月日などの情報が必要だからです。
会社での保管は義務ではない
年金手帳は基本的に自分で保管するものですが、会社によっては退職するまで預かってもらえるところもあります。自分で持っていてはなくしてしまいそうなので、会社で保管してもらえるのは嬉しいことです。
しかし、会社で保管してもらえるからと言って、必ず預けなければならないという事ではありません。もちろん入社時には手続きのため提出は必要ですが、決して「あなたの身柄は私たちが確保しました」という意味で年金手帳を預かっているわけでないのです。
それに返却の要望があれば会社側に否定する権利はありません。返却希望の旨を会社に伝えればすぐに返してもらえます。
コピーでもOKな会社もある
年金手帳の確認は、原本のコピーでもOKとする会社もあります。特に新規採用を頻繁に行っている会社や人の出入りが激しい企業などは、コピーで済ませているところが多いようです。
要は基礎年金番号、氏名、生年月日が分かれば良いので、会社側で年金手帳をなくしてしまうようなトラブルや、退職時に返却が必要になるという手間をあらかじめ避ける会社も増えているということです。
コピーの仕方
年金手帳のコピーの仕方は、会社から説明がある場合がほとんどですが、基本的には下記の必要な情報が記載されたページのみで大丈夫です。
- 基礎年金番号
- 氏名
- 生年月日
- 性別
縮小・拡大などは行わず、原寸大の大きさでコピーして提出しましょう。紙の大きさに決まりはありませんが、A4サイズが無難でしょう。カラーコピーでも白黒コピーでもどちらでも構いません。
提出した場合、退職時に返却してもらう
会社に年金手帳を提出している人は、退職時に必ず返却してもらうのを忘れないでください。退職の前に年金手帳の所在を確認しておくと良いでしょう。
退職して次の就職先が決まっていても、決まっていなくても、年金手帳は必要になります。就職先が決まっている場合は、新たに保険や年金に加入するため、新しい職場に提出しなければなりません。
また、再就職するまでに期間が空きそうな場合は、退職してから14日以内に国民年金に加入しなければなりません。
他にも、退職時の年齢が年金の支給開始年齢になっている場合は、年金を受け取るために年金手帳が必要です。
引越しにより住所が変わったら変更手続きを
転勤や地元に帰るなど、引越しにより住所が変わってしまったら、年金手帳の住所も変更手続きをしなければなりません。
ここからは国民年金・厚生年金・共済組合それぞれの住所変更手続きの方法を見ていきましょう。
厚生年金に加入の人
会社員として働いており、厚生年金に加入している人の場合は、年金事務所や市役所などの窓口で自分で住所変更する事はできません。変更手続きをするには、務めている会社に申し出る必要があります。
申告すると、会社の事務担当者などが『被保険者住所変更届』の書類を日本年金機構に提出します。扶養家族がいる場合でも、会社に言えば変更可能です。自分では特に手続きは不要なので楽ですが、会社に申告することだけは忘れないようにしましょう。
国民年金に加入の人
国民年金に加入している場合は、自分で変更手続きが必要です。年金事務所や市役所、町村役場の国民年金担当課で『被保険者住所変更届』を年金手帳と一緒に提出してください。印鑑、本人確認書類が必要なので、忘れずに持参しましょう。
また、窓口には本人以外の代理人が手続きに行くこともできます。その際は本人の国民年金手帳と代理人の印鑑、代理人の本人確認書類、そして委任状が必要です。
委任状は『日本年金機構』のホームページからダウンロードすることもできますが、必須事項が書かれていれば任意の用紙でも問題ありません。
共済組合の方は住所変更の届出不要
共済組合に加入している人は、住所の変更手続きは不要です。住民基本ネットワークというシステムを利用しているため、共済組合を通して住所変更がスムーズに行えます。
ただし、引越しの際に電話番号が変わる場合、海外から国内に引越し・国内から海外に引越しする場合、外国籍の人が引越しする場合は、共済組合へ住所変更届けを提出しなければなりません。
もし年金手帳を紛失してしまったら
年金手帳は就職、転職、退職などがない限りは、年に1回使うか使わないかくらい使用する機会が少ないです。そのため、掃除した際にどこかにやってしまったり、保管していた場所を忘れたりと紛失する人も多いです。
万が一、年金手帳を紛失してしまった場合は再発行しなければなりません。
再発行は市役所か年金事務所で
年金手帳の再発行は、加入している年金の種類によって、市役所で再発行できる場合と年金事務所で再発行する場合に分かれます。
これは意外と知られていないことで、「年金手帳の再発行は市役所で行う」と思い込んでいて市役所に行ったものの、再発行できずにとんぼ帰りするはめになったという人も少なくはありません。
自分がどの年金に加入しているか、どこで再発行の手続きができるのか、また手続きには何が必要なのかを事前に調べて、スムーズに再発行できるようにしましょう。
市役所でする人
市役所で年金手帳の再発行が可能な年金は『国民年金』のみです。学生や無職、自営業などで国民年金に加入している方は、市役所に再発行しに行きましょう。
市役所で年金手帳を再発行する場合は、基礎年金番号が必要になります。基礎年金番号は市役所でも確認してもらうことができるので、番号が分からない人はついでに窓口で確認しておきましょう。
市役所での再発行にかかる期間は約1ヶ月は見ておいてください。結構時間がかかります。
年金事務所でする人
年金事務所で年金手帳の再発行ができるのは、『厚生年金』や『共済年金』に加入している人です。
会社員や公務員、配偶者の扶養に入っている人は、近くの年金事務所に手続きに行きましょう。しかし、どこの年金事務所でもOKというわけではありません。勤務している会社を担当している年金事務所に行く必要があります。
また、厚生年金に加入している人で手帳を紛失した場合、勤務先の会社に頼めば、会社側で再発行の手続きをしてくれる場合もあります。紛失したら一度、会社に相談してみると良いでしょう。
手続きに必要なもの
再発行の手続きに必要なものは下記の通りです。厚生年金の場合は、追加で『会社の所在地が分かる書類』も準備しましょう。
- 年金手帳再交付申請書
- 顔写真の付いている身分証明書
- 認印
- 基礎年金番号
年金手帳再交付申請書は、市役所や年金事務所で記入することもできますが、時間がない人は前もって取り寄せて記入しておいた方が良いかもしれません。
身分証明書は、免許証やパスポート、マイナンバーカードなど写真のあるものが必要ですので、注意しましょう。
基礎年金番号がわからず市役所や年金事務所で調べる場合にも、身分証明書は必要です。また誕生月に送られてくる年金定期便にも記載されているので、手元にある場合は確認してみましょう。
再発行したいけど窓口に行く時間がない方は
年金手帳を再発行したいけど、平日は仕事などで行く時間がない、代わりに行ってくれる人がいないという方は、電子申請や郵送でも手続き可能です。
電子申請の方法
電子申請とはインターネットで再発行手続きができる便利なサービスです。総務省が運営するe-Gov(イーガブ)というサイトで申請することができます。
申請手順も簡単で、サイトにアクセスして必要書類を提出するだけです。手順通りに進めていけば迷うことなく申請できるようになっているので、比較的簡単に申請できます。
電子申請を行うにはインターネット上の認印である『電子証明書』が必要です。またOSがWindows7以上でJavaがインストールされているパソコンが必要になります。
申請するまでが少々面倒くさいですが、家に帰ってゆっくりと手続きできますし、空き時間に作業できるので、平日に時間を取られることもありません。
郵送の方法
電子申請が難しい場合には、必要書類に記入して、市役所や年金事務所へ郵送する方法をとりましょう。年金手帳再交付申請書は市役所や年金事務所から郵送してもらうこともできますが、到着まで少々時間がかかります。
可能であれば、年金手帳再交付申請書は自分でダウンロードして印刷したほうが早いでしょう。
まとめ
自身の基礎年金番号が記載されている年金手帳は、20歳で年金保険料を支払うようになってから、老後の年金受給時までずっと必要な大切なものです。
日常的に使うものではないからこそ、しまった場所を忘れたり、掃除や引越しの際に誤って捨ててしまったりしないよう、注意を払って保管しましょう。
住所に変更があったり、紛失したり場合は速やかに手続きが必要です。加入している年金によって手続きを行う場所や流れが異なるので、自分の加入している年金が何なのかをしっかり確認しましょう。